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少しずつ、必ずよくなる……けいとさんの体験 1

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かつての記事――2013年6月21日のエントリで、次のような体験談を公開しました。

 

20種類もの薬を試されて、いま離脱症状に苦しむ 

44歳の女性(仮にK子さんとします)から、切実なメールをいただきました。

薬を飲み始めて5年。しかもこの1年というものは、じつに多くの薬(20種類)を医師に試され、現在はその副作用なのか離脱症状なのか、ともかくかなり状態が悪化してしまいました。http://ameblo.jp/momo-kako/entry-11557355964.html

 

 エントリを改めて読んでほしいが、以下、簡単にK子さんの経緯を紹介します。

 

2012年に、主治医の指示でサインバルタを減薬したところ、めまいやふらつき、過敏性が強まり――医師から離脱症状の説明もなく、もちろん本人も知らなかったため――病気が悪化したと思いあわてて服薬を再開した。

それでも一向によくなる気配もなく、医師への不信感から転院したが、離脱症状を病気の悪化とみなしている医師に問題解決は不可能で、結局K子さんは次から次へと薬を試されることになってしまった。

パキシル、ジェイゾロフト、ルボックスなど6種類の抗うつ薬。さらにストラテラ、ジプレキサ、エビリファイ、レキソタン、デパス、ハルシオン、チスボン、コントミン……。

結局、何を飲んでもよくなるどころか体調は悪化するばかりだったため、K子さんはその時点でハルシオン、リスミー、ロヒプノールを残して、あとの薬はすべて断薬。

しかし、その頃から離脱症状はさらに厳しいものとなっていく。自力で一睡もできない。味覚がない。時間や空間に異常がある。車の運転ができない……。

「わけがわからなくなるほどの苦しい全身症状が3時間続く日が何度かありました。耐える以外ないのですが、死ぬ以外ない、この苦しみで脳が破壊されそうです。3時間でクタクタになって、そのあとちょっと楽な時間がきます。

今、途方に暮れています。なぜこんな目に合うのだろう、処方薬なのに。毎日、どうやって子供たちと家族を巻き込まないでいられるか考えながら、眠剤で気絶したような眠りと絶望感の目覚めです」

 今の主治医にこの苦しさを訴えると、「離脱は2週間で終わる」と言われたという。そして、K子さんが恐れている「全身症状」にも効果があるとして、抗うつ薬を勧めてきた。

 家族も困り果てている。睡眠薬依存として入院を勧められている。

「それまで、今の症状など全くなかったのに。なぜ、やめた薬でこんなに今悪くなるのか? 時間が解決してくれるはずなのに、わたしはあとからあとから重ねてでてきています。

健康になった方々や、今闘っていらっしゃる方々、本当にできると、存在しているという希望をください。

つらいけれど、これが現実で、耐えて、薬が抜ければ元に戻れるのでしょうか? 限界をこれからも越えていくのでしょうか?」

 

 K子さんのこうした切実な訴えに対して、2年前、たくさんの励ましのコメントをいただいた。

 そして、このエントリの後もK子さんは「けいと」というハンドルネームでときどきブログにコメントを寄せてくれたが、しかしその文面から、体調は相変わらずのようだった。改善の兆しもなく、家族との関係という大きな問題を抱えながら、それでも少しずつ減薬をつづけ、ほぼ寝たきりのような生活を送っていることが垣間見られた。
(つづく)


少しずつ、必ずよくなる……けいとさんの体験 2

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 ところが――。

 このエントリからちょうど2年たった今年の6月22日のこと。私はケイトさんから次のようなメールをいただいたのである。


「ご無沙汰しています。けいとです。減薬を始めて2年間、殆ど寝たきりで絶望しかない日々でしたが、今月始めに、突然起き上がることができました。ロヒプノール単剤0.05mgにまで減らして14日目の出来事でした。

2年ぶりに車の運転をしながら涙がでました。

家中の片付け、料理……体の揺れ、痺れを我慢しながらですが、一通りできるようになりました。当事者としても信じられないことで、待ち焦がれていた回復の兆しとはいえ半信半疑でご報告が遅くなりました。

時々、意識が遠のくようなこともあり、服薬前の生活はできていません。体中に湿布を貼って散歩の距離を延ばし、睡眠が取れるよう、体力回復するよう努めています。ウトウトと意識を失えば、また夜の睡眠が浅くなり、状態が悪くなると分かっていますので、昼間どんなに眠くても動き回る、回遊魚のような毎日です。


心療内科に行かなければこんな体にはならずに、別な人生、もっと有意義な努力をできたと思うと気が遠くなりそうです。まだまだ辛いですが、回復したいです。

かこさんのブログで薬害に気付かせていただきました。本当にありがとうございます。もう駄目かと思いましたけど、戻って来ることが出来るかもしれません。まだ、諦めないでがんばります。」



このメールを読んだときは、本当に私もうれしく、思わず声を出してしまったほど。

 さらに7月31日にはこんなメールが届いた。



「けいとです。62日に、2年間あまりの寝たきり状態から起き上がり、22日から、復職訓練を受けました。歩き始めたばかりで体中痛かったですが、動き回ると揺れや痺れが軽減し、復職を諦めきれませんでした。3年間休業すると失職になります。本当にギリギリのタイミングでした。

周りも危うがりましたが、何とか訓練を終え、今、結果を待っています。

日常生活が送れることだけでも幸せですが、仕事に戻れたら、夢のような気がします。取り返せるものは全て取り返したいです。それだけ、失ったものが大きいです。寝たきりの間に、私の家庭は壊れました。(略)

いつか、かこさんにお目にかかる機会があったらなあと夢見ています。ブログを続けるのは相当なご苦労だと思います。ご活動にいつも感謝しています。暑い日が続きますから、お体にお気をつけて。」





これに対して、私から「けいとさんのこの回復の体験をブログに公開してもよいですか」というメールを出したところ、さっそく返事があった。



「2年前、ブログで取り上げていただいた頃、私は死んでもおかしくない状態でした。

その後一気断薬をしようとして、丸二ヶ月間、一睡もできなかったです。その間ずっと、かこさんの「少しずつ良くなる」「時間が味方する」「(飲んだ期間が)たった5年です、きっと良くなる」という言葉にどんなに励まされたかしれません。

また、エントリについたコメント欄でもたくさん励ましていただきました。「薬が原因と気づいたのだから減らして、必ず良くなる……」。

少しも良くならない毎日に本当にウンザリしながら、頂いたコメントのスクリーンショットを、泣きながら眺めていました。いつも横になっているしかなかった日々でした。

復職が決まったら、あの時アドバイスくださった方々に、コメント欄でお礼を書かせていただこうと思っていました。かこさんがブログで書いてくださるなら、過去エントリのコメント欄より読んでいただける可能性が高くなると思います。よろしくお願いします。」

 

 けいとさんとしては復職がはっきり決まるまでは……との思いが強いようだった。

 当然である。薬害であるにもかかわらず、いざ復職となると世間の対応に疑心暗鬼になる気持ちはよく理解できる。

 私もちょっとどきどきしながらけいとさんからの復職決定の連絡を待った。

 しかし、私が勝手に予想していた日を過ぎても連絡が来ない。ダメだったのか? だとしたら、どういう言葉をかけて慰めよう……などと考えていた矢先、次のようなメールが届いた。

「けいとです。復職の通知が届きました。やっとかこさんにご報告できます。

今、職場から携帯で打っていて、メルアドが違いますが本人です。こんな私の存在が、減薬に耐える誰かの励みになれたらと思います。

コメント欄で、私を励ましてくださった皆さんに、後ほどお礼を書きたいです。まだ色々症状が残り、ロヒプノール002mgからの断薬もありますので、慎重にいきます。でも、大声で叫びたいくらい嬉しいです。」





 そして、2年前のあのエントリにけいとさんからのコメントがついたのだった。8月13日のことだ。

「このエントリで取り上げていただいたK子ことけいとです。

減薬をはじめてから2年以上寝たきりでした。その間、ここでアドバイスいただいた「時間がかかっても、必ず良くなる」という言葉にどれほど支えられたか……。

6月初めに起き上がれるようになり、家事も運転も少しずつできるようになりました。歩きはじめは、手足の浮腫みと痛みに、湿布を貼りまくりでしたが、歩ける嬉しさで散歩の距離を伸ばしていきました。

体の揺れ、痺れも少しずつ軽減し、薬はとうとうロヒプノール0.02mgまで減らせました。慎重に断薬したいと思います。

2年以上、地獄をみました。その後にこんな回復ができるとは思ってもみませんでした。

今月、復職します。スタートラインに立てた事に感謝して、頑張ります。

見ず知らずの私にエールを送って下さった方々、本当にありがとうございます。

かこさん、このサイトを運営してくださってありがとうございます。

今も減薬、断薬に耐えておられるみなさん。私も色々な症状が残り、まだまだ途上の身です。ただ、生きましょう。毒されて傷んだ体ですが、きっとまだ使えます。捨てようと思ったこともあったのですが、後にも先にも私が持てるのはこの体だけです。この体を捨てないで、生きましょう。」





 ***********

 ゆうさんの会のお知らせ

 いつもなら9月の第一金曜日ですが、この日、残念ながら場所の確保が出来なかったとのこと。

 変わって、第2金曜日、9月11日、午前11時から、小岩近くのファミレスで会を開くそうです。

 お申込みはゆうさんまで。

 pieta2kids@gmail.com


 



















発達障害概念スペクトラム

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 今回も発達障害について考えてみたいと思う。

精神医療を考えるうえで、いい意味でも悪い意味でも、発達障害を抜きに語ることはできないと思っている。が、「発達障害」というと――この命名の良し悪しについては今は触れないことにして――過敏な反応を示す人が多いように感じる。つまりそれは発達障害概念の多様さの証明ということだろうか。

たとえば、そのような「障害」は精神医療、製薬会社が投薬の対象を増やすために作り出した架空のものという「考え」がある。これをスペクトラムの左に据えるとしたら、一方で、「発達障害らしさ」があるだけの子どもに対しても投薬を行って、何とかコントロールしていくべきという「考え」もあり、いわばこちらは最右翼か。

そして、そのあいだには、まさにスペクトラムとして、こうした考えを濃くしたり薄めたりしたものが存在し、さらにこの問題を複雑にしているのは、AC(機能不全家族)や愛着障害というファクターもからんでくることだ。

発達障害というより、むしろこちらの要素のほうが問題の本質かもしれない、という意見もあったり、こうした意見を述べると、また決まってそれに対する反論が提示されたり、さらにそれに対する反論が示されたりして、「発達障害」の議論にはなかなか終わりがやってこない(これはつまり、人間存在というものに、決定的な一つの結論がないのと同じことか)。

が、時にその議論が白熱し、感情的なものになったりすることもあり、そうなると、相手にとってはもう一方が非常に依怙地に見えてきて、心の中でか、実際口に出してかわからないが、「ああ、だから発達障害なんだよね」という結論に落ち着いたりする。

発達障害だから「こだわり」が強いのか、こだわりが強いから発達障害と言われるのか、それもまたわからないし、こだわりの強さの根っこには別の問題が隠れているのかもしれず、糸はますますもつれてくる。

ただ、発達障害と言われる人たちの多くに見られる「感覚の特殊性」は、やはり否定しようもなく存在するものかもしれず、「発達障害などない」と唱える人たちは、では、この現象をどう説明するのだろうかと思ったりもする。

そうした「感覚の特殊性」から多くの(心の)問題が生じているのは事実であり、そこを見ようとしないのは、精神科医なら「ヤブ」に相当するのだろうし、高みの見物で物を言う精神医療関係者は、当事者への視線を欠いたまま、評論家的に、批判のための批判をしているに過ぎないようにも思われる。



ともかく、終わりのない議論を続けても終わりはやってこないので、「概念」についてはこれ以上掘り下げないが、概念とは別に最近気になることがある。

私はこの問題の関わり方として、どうしても精神医療の方向から発達障害を見ることになるが、じつはほとんどの親たちは、発達障害の方向から精神医療を見ているわけである。見る方向(問題の関わり方の順番)が違うと、見える景色がずいぶん違うものになるらしい。

わかりやすく言えば、発達障害の方面から精神医療に入ってきた人(当事者というよりお母さんの場合が多い)は、精神医療の何たるかを知らず、わりに精神医療に好意的である場合が多い。だから、私が「精神医療とはこうしたもの」という前提で話を進めると、かみ合わない。

落ち着かないお子さんを持つお母さんが学校から服薬を勧められた。しつこく言われ、一度は飲ませたものの、やっぱりこれはおかしいと薬をやめさせたのだという。私とすれば、「わかっている人」としてメールを差し上げ、もう少し詳しくお話を聞かせてほしいと頼んだところ、お断りの返事をいただいた。そこには学校への信頼や精神医療への信頼の言葉が短くだが、並んでいた。

真意は測りかねるのだが(自分の子どもに薬は飲ませないが、精神医療=悪とは言い切れないということらしい)、発達障害とされるお子さんを持つお母さんの認識がこのようなものなら、学校に精神科医が入ることに何の抵抗も示さないというのは大いにありうることだろう。

薬への信頼を持っている母親もいる。薬を飲んでいるから何とかここまでできていると考える。

そういう「発達障害」当事者・家族にとって、以前のブログで取り上げた「学校現場は精神科医の助けを求めている」ということに対する私の反論は、まったく的外れなものかもしれず、親たちの思いを知っている教師もまた、この人は何を抗議しているのだろうと怪訝に思っているに違いない。

教師も、そして当事者・家族でさえそういう土俵にいるのだとしたら、ではいったい、私は何のために誰のために闘っていることになるのだろうかと、足元をすくわれる思いにもとらわれる。

実際、ある当事者のお母さんから、この点についての批判をいただいた。つまり、学会での発言一つをとって批判をするのはいかがなものかと。

そのご意見は真摯に受け止めるとして、ではなぜそうなのかと考えたとき、やはり、発達障害当事者家族は、精神医療の何たるかを知らないからなのだろうという思いを強くしたのである。

発達障害への投薬はうつ病や統合失調症のような多剤大量にはなりにくい。もちろん例外はあって、発達障害という診断に対して統合失調症並みの投薬をするヤブもいるが(とくに大人の発達障害に対して)、それでも発達障害という診断の場合、一般的にはそれほどの大量処方は免れて、たいへんな副作用を経験しないまま、したがって薬の害にも気づきにくい。

だから、なのだろう。批判が噴出しないのは。むしろ親として感じるのは、薬の恩恵のほうなのかもしれない。

さらに感じるのは、発達障害とされる子どもを持つ親御さんの余裕のなさだ。育てるのに精一杯。世間からの批判をかわすのに精一杯。そこに精神医療を批判する余地(気力)など残されていないのかもしれない。さらに、「発達障害」とされることで得られる一種の安堵感。

 ただ、投薬に関していえば、飲み続けても安心な薬かどうかは、誰にもわかっていないのである。それはまぎれもない事実。

いま服薬している子どもの10年、20年後のことは誰にもわからない。その意味では、現在進行形の治験のようなものなのだ。

その昔、警察が学校に入ることへの違和感があったはずだが、校内暴力が問題になってからは、その違和感が口にされることは少なくなった。しかし、国家権力によって校内暴力が抑え込まれると、そのエネルギーは地下にもぐって、陰湿ないじめがはびこるようになったわけだ。が、そのいじめに対しても、あの夜回り先生とかいう人は、警察官が始終学校を巡回していればいじめはなくなると断言して、私はこの発言を聞いたとき正直腰を抜かしそうになったのだが、精神科医が学校に入ることは、こうしたことと同様、ごく「普通」のことになる日もそう遠くないのかもしれない。

かくして、日本の学校は教師以外の権力者たちに牛耳られ、子どもたちは手入れの行き届いた庭の植木のようになだらかに刈り込まれて、どこにも凸凹のない人間へと造り変えられる。制御しやすい子どもたちを望む大人たちの密かな合意によって。

 精神医療と発達障害の関係は、生かさず殺さず……。

しかも、こうした発達障害の過剰診断がはびこる中、肝心なところで発達障害という尺度を忘れ去って(除外診断を行わず)、統合失調症として恐るべき投薬が行われているというこの大きな矛盾は、精神医療の未熟さそのものの現れだろう。




********

23日の仙台茶話会も、たいへんよい会になったと思います。

それこそ発達障害当事者、家族の方の参加。さらには、いま流行のうつ病⇒双極性障害⇒統合失調症診断という経験を持つ人や摂食障害から発達障害への診断変更をされた人。さらには、おそるべきベンゾの大量処方(医師自らが行う限界を大幅に超えた処方)。減・断薬経験者等々。まさに精神医療の縮図を見るような印象を抱きました。

言いっぱなし聞きっぱなしとはいうものの、それぞれ(痛い)経験を経ているがゆえの、温かい、本当に当人の立場にたってのアドバイスもありました。

こういう機会を、また多くの土地で開くことができたらよいと思っています。




発達障害の治療? 体験談

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「煌彩ハム」さんからのお返事を待たずに、コメントをエントリとして紹介します(煌彩ハムさん、すみません)。

 私も煌彩ハムさんからのコメントは、当事者家族としての本音、精神医療との距離感など、正鵠を得た意見としてとても参考になりました。

 発達障害といわれるお子さんを持つお母さんの追い詰められた辛い気持ちもつづられ、深く考えさせられました。



 以下、煌彩ハムさんのコメントです。




いつも拝見させていただいています。

うちには9歳の発達障害児がいます。

診断名はADHDと自閉症スペクトラムと言われましたが、息子には多動性はなく、特に抑えなければいけない症状などはみられませんでした。

ですが診断されたその場で、服薬を勧められました。

しかし、私自身が精神薬で苦しんだ人間で、当時ストラテラも服用していたので(私は発達障害ではないのですが、なぜか処方されていました)、あの思考を無理やり押さえつける感覚や、食欲などの欲求がなくなる感覚を、まだ小さい息子に体験させることにためらいがあり、服薬を断って、関わり方などを工夫していくという判断をしました。

その後このサイトに出会い、あの時服薬をする選択をしなかった事を本当に良かったと感じました。

でも、たまたま私が薬を飲んでいたから良かったようなもので、知識がなければ飲ませていたと思います。

親はただでさえ発達障害のある子供の事がなかなか理解できずに苦しみます。

そこに専門医から「お薬を飲む事で息子さんの頭の中が整理されて、考えがまとまりやすくなる事によって、本人もすごく楽になるんですよ~」なんて言われたら、なんの躊躇もなく薬を飲ませてしまうと思います。

ですが薬の怖さ、離脱症状の苦しさを身をもって経験した今だからこそ言えますが、これほどリスクのある薬を、まだ発達途中の子供に与える事は恐怖でしかありません。

あの時の自分の判断が間違いではなかったと、このサイトを読んでいて確信しました。

長々とコメントしてしまいましたが、薬によって苦し

む子供達が少しでも減るよう、私も訴えていきたいと思います。
(「体験談募集」のエントリに寄せられたコメント)




こんばんは。

我が家にも発達障害児がいるので、かこさんのお言葉、胸に沁みす。(これは、「発達障害概念スペクトラム」に寄せられたコメントです)。

私の個人的意見ですが、母親とは常に子供の評価を気にしていると思います。

子供関係、それを介したママ友関係、世間。

そう言った関係の中で母親は自分自身も評価されると思っています。

そんな中、発達障害児を持つ母親は、世間の批判、ママ友からの冷たい視線を浴びることになります。

本当は子供のために強くなり、自分の事など気にせず子供に向き合っていかなければいけませんが、時には心が折れてしまう事もあると思います。

「この子がちゃんとしていれば」「この子がもう少し大人しければ」「なんで普通の事が出来ないのだろう」

そんな思いが、いけないと思っていても次から次に芽生えてしまうのです。

そんな時に医者から「薬で少しは症状が抑えられますよ。」と言われれば、藁にもすがる思いで簡単に薬に手を出してしまうと思います。

実際に服薬を始めれば、子供は薬の力で大人しくなります。

実際には思考を止められて、考える事がめんどうくさくなっているのだとは思いますが、そこまで伝える能力のない子供は、言われるままに薬を飲むでしょう。

そうすれば親としたら今までの悩みや苦しみから少し解放され、やっと笑って子供と向かい合えるんだと思います。

「これで周りにも迷惑をかけず、私も頭を下げて回らなくて済む」

そう安心するんだと思います。



精神医療の現実は、よっぽどの事がなければ知る機会はありません。

それよりも毎日の現実である発達障害児との日々に疲れ切っています。

もし思春期になって自分の手では抑えられなくなったら…。

そんな不安がある以上、抑えつける方法である薬を否定する事も出来ないのだと思います。



私は自分が体験をしているので子供に薬を与える事はなかったですが、もし精神医療に疎ければ、間違いなく服薬をさせていたと思います。



発達障害とは本当に微妙なものだと思います。

ただ、まだ世間の偏見や無理解の多い問題である以上、悩む母親が薬に手を出していくと思います。

なんとか精神医療の現実が多くの人に伝わり、被害に遭う子供達が減るように、私も何か訴えていきたいです。




何度もすみません。(同じエントリについたコメント。)

はい、本当に薬の現実を知った上での服薬でなければいけないと思います。

でもそんな事、どこでも教えてくれないんですよね。

保健センターでも病院でも、心理士も教師も、薬のメリットは教えてくれても、デメリットは教えてくれないんです。

逆に私が薬の怖さを訴えたら、一気に面倒くさい親として対応されました。

周りの発達障害児を持つ母親達にも薬の怖さを訴えましたが、問題行動を抑えてくれる(無理やり押さえ込んでくれる)薬を否定する人はいませんでした。

たまに私の決断は本当に合っていたのか、不安になることもあります。

子供にとって一番いい方法を取りたい。

もしかしたら薬も上手く使えば、子供が楽になるのでは?

そう揺らいでしまう時もあるんです。

親だから、少しでも子供に幸せになって欲しいと願い、その答えが見つけられなくて迷うんです。

そんな気持ちがある以上、母親達は精神医療を完全に切り離すことは出来ないと思います。



だからかこさんの声は、誰も教えてくれない真実を伝える大切な声なんです。

どうか私達母親のためにも、これからもその声を聞かせて下さい。

私も迷いながらもちゃんと真実を見つけ、子供と向き合って行きたいと思います。

長々と生意気にすみませんでした。

**********************




精神医療は、こうした迷い、悩み、苦しむ母親に対しても薬で「楽」になろうと誘いかけてきます。もちろん、子どもの問題でうつ的になっている母親、不安に押しつぶされそうになっている母親はいます。ただ、そういう心の問題を「薬」で解決できるものなのかといえば、疑問です。

 しかし、お子さんと「セット」のように服薬をされている親御さんは実際多いです。親が飲むから飲みたくない子どもも飲むようになった、という現象も起きているようで、こうなるともう何とも言葉のかけようがありません。




ともかく私は、「発達障害」の「治療」という言葉を聞くたびに、胸に何かが刺さったような違和感を覚えます。
 発達障害は治療すべきものなのか? 

その点に関して、最近読んだ二つの論文から、印象に残ったものを引用しておきます。



「第50回日本児童青年精神医学会総会」(2009年)において、京都市児童福祉センターの門眞一郎氏の講演。「自閉症の薬物療法――その変遷と問題点――」から。

「現在のところ、自閉症の根本治療薬は存在しませんが、対症療法として有効性が認められているものはあります。抗精神病薬ハロペリドールとリスペリドンがそうです。

 リスペリドンに関してはChavezが(無作為化比較試験)の文献を検索し、4篇について検討しています。興奮、攻撃性、多動性、常同性に有効でかつ安全であるが、自閉症の中核症状(対人交流とコミュニケーション)には効果がないと結論しています。

(このChavez論文には、第三著者のReyがヤンセンファーマのコンサルタントであるという利益相反の開示がなされています。ヤンセンファーマは商品名リスパダールを販売しています)。

 

 さらにSSRIに関しては、無作為化比較試験はまだほとんどありませんが、臨床ではよく使われだしました。児童青年対象の論文は2004年のHollanderの1篇しかなく、この文献では45ケースを対象に、フルオキセチン(プロザック・日本未発売)とプラセボを比較したもので、反復行動の有意な減少を報告していますが、副作用としては興奮が指摘されています。」



 

 つまり、現在自閉症(スペクトラム)と言われて、おそらくもっとも高い頻度で処方されているリスパダールの効果(もちろん対症療法としての効果)は、それを証明する研究にバイアスがかかっていたということです。にもかかわらず、「発達障害、即リスパダール処方」という現実、この図式は、明らかに間違っています。

 さらにSSRIの効果についてはほとんど何の研究結果もないに等しい(というより、18歳以下の子どものうつには効果なしという結果は出ています。)



 

 これ以前にも自閉症の治療と称して様々な薬物が登場しては消えていきました。発言者の門氏は、そうした現象に対して「責任はいずこに?」として次のように批判しています。

「いくつもの薬が登場し、そしていつの間には退場していきました。そのことについて研究者や製薬会社はどう考えているのでしょうか。売れなくなったら、ただそれだけのこと

なのでしょうか。それを患者に処方し買わせた張本人(医師)には責任はないのでしょうか。」



 もう一つ、引用します。

『精神医療』という雑誌(批評社)の2015年 №79で「自閉症スペクトラムの<支援>と<治療>を問う」という特集が組まれています。

 その中で、石川憲彦医師が次のように書いて(対談で発言して)います。



「私は、治療というレベルで言えば、遺伝子レベルまで含む解析をきちんと行って、そのレベルと対応するような化学物質が出てくるまで、治療と呼べるほどのものが出てくるとは思わないです。

(中略)

 効果ありましたって治療報告も、数十年間ぽこぽこ無節操に変わっている。それを評価すること自体が、医学としてはできないから、非医学的な支援という言葉が使われたんだと思う。今の精神医療においては、はっきり言って治療なんて言わない方が良いと思う。

 もっと先のレベルへ行った時でなければ、治療が出てくるかこないかはわからない。ただ、その時でも、実はどっちの遺伝子の働き方が正しいかの判断は、病的とされる行動の発現が病理かどうかすらわからないという前提から出発しないといけません。」



 こういう論証をたくさん集めて、「薬なしでいい」「いや、その方がいい」という情報を発信していく必要性を痛感しています。









































ADHD薬、コンサータ・ストラテラ

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 発達障害の記事が続いたので、発達障害とされるお子さんを持つご家族の方の目にこのブログが止まることを考えて、今日は改めて、いわゆるADHD(注意欠陥多動性障害)に対して使われる薬、コンサータ、ストラテラについて書いておこうと思います。


 厚生労働省が今年3月に発表した調査によると、子どもへの向精神薬処方でこのADHD薬は、2010年までの6年間で、6~12歳が1.84倍、1318歳が2.49倍と大幅な増加を見せています。

 しかし、その副作用については、これまで大きく報じられることもほとんどなく、「子どもが落ち着いた」「勉強に集中できるようになった」などの声を聞くことの方が多いような印象です。

 確かに、服薬によって「多動」は減るかもしれません。しかし、それを「改善」と呼んでいいのかという疑問はつきまといます。改善を実感しているのは、誰なのか?(教師? 親? 本人?)

 コンサータを子どもに飲ませているというお母さんに話を聞いたことがありますが、「何か変化がありましたか?」という問いに対して、「うーん」と言って首をひねっていました。

 確かに先生は「少し落ち着きが出てきた」と言っていたといいますが、家庭ではあまり変化がない……?

としたら、その程度の「効果」と、リスクを天秤にかけて、親はどう判断していけばいいのでしょう。

しかし、天秤にかけたくても、リスクそのものを知っている親御さんがほとんどいないのです。医師も薬剤師も支援センターの人も、もちろん教師も、誰も教えてくれないと言います。言われるのはただ「効果」とされているものだけ。

PMDAが「医療用医薬品の添付文章情報」をネットで公開しています。

http://www.info.pmda.go.jp/psearch/html/menu_tenpu_base.html

 しかし、わざわざここにアクセスして、薬のことを調べる人はそう多くはないでしょう。


 そこで、かいつまんだ情報を添付文書から引き出しておきます。参考にしてください。


コンサータ錠(メチルフェニデート塩酸塩)

発売元 ヤンセンファーマ株式会社 2008年発売

http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1179009G1022_1_11/

18㎎、27㎎、36㎎錠がある。


副作用

<小児AD/HD承認時>

AD/HD患児を対象として国内で実施した第II相試験、第III相試験及び長期投与試験の総症例216例中、副作用(臨床検査値異常を含む)は17480.6%)に認められた。その主なものは、食欲減退91例(42.1%)、不眠症40例(18.5%)、体重減少26例(12.0%)、頭痛18例(8.3%)、腹痛12例(5.6%)、悪心12例(5.6%)、チック11例(5.1%)、発熱11例(5.1%)であった。


<成人AD/HD承認時>

成人AD/HD患者を対象として国内で実施した第III相試験及び長期投与試験の総症例272例中、副作用(臨床検査値異常を含む)は20976.8%)に認められた。その主なものは、食欲減退108例(39.7%)、動悸59例(21.7%)、体重減少54例(19.9%)、不眠症49例(18.0%)、悪心45例(16.5%)、口渇40例(14.7%)、頭痛29例(10.7%)であった。



注・コンサータの成分である「メチルフェニデート」というのは、かつて子どもの注意欠陥や多動、大人のうつ病等に処方されていた「リタリン」と同じ成分です。リタリンが作用時間が短く依存が形成されやすいので「危険」として、コンサータは徐放剤(徐々に溶けていって、作用時間を長くしている。コンサータの場合、朝飲むと、12時間効果が持続するとされている)であるというが(だから、依存の可能性が少ないという論理)、長時間体内にとどまる薬は短期作用型の薬以上に効果が高まるとされています。

 コンサータは中枢神経刺激薬、つまり「覚せい剤」です。コンサータの副作用として挙げられている食欲減退、体重減少は、まさに覚せい剤の副作用そのものです。

 ちなみに、米国国立衛生研究所が行った研究によると、メチルフェニデートなどADHD治療薬と言われる薬を飲み続けた子どもの、8年後の状態はというと――

・短期的に改善されたとされるADHDの症状はすべて元に戻り、

・症状はかえって悪化し、

・非行率が高く、

・身長が4cm低く、

・体重が3㎏軽かった、

 という結果になっています。

 体重と身長の抑制については上記の添付文書にも明記されています。


 もちろんこの他にも多くの副作用が列挙されています。なんといっても副作用発現率は小児の場合80%以上です。

 また、6歳未満の幼児に対する安全性は確立していません。(6歳未満の患者を対象とした試験は、実施されていない。)

さらに「作用機序」という欄にも興味深いことが書かれています。

「メチルフェニデートは、ドパミン及びノルアドレナリントランスポーターに結合し再取り込みを抑制することにより、シナプス間隙に存在するドパミン及びノルアドレナリンを増加させて神経系の機能を亢進するものと考えられているが、AD/HDの治療効果における詳細な作用機序は十分に解明されていない。」

 そういう薬を子どもに投与していいのでしょうか? 評価基準として「親から見た感じ」、「教師から見た感じ」がプラセボよりコンサータ服用のほうが「おとなしくなった」と「観察された」からというのが、この薬がADHDに使われる唯一の理由です。

 しかし、この中枢神経刺激薬の害は、飲んでいるときだけでなく、飲み続けた子どものその後の人生を大きく変えてしまう可能性があります。

 アメリカではADHDとして刺激薬を服用する子どもが爆発的に増え(2007年には4~17歳のアメリカの子どもの23人に1人が、刺激薬による治療を受けていたと報告されています。)その結果どうなったかといえば、子どもの双極性障害患者の増大です。

 刺激薬は覚醒症状と気分変調症状の両方を引き起こし、こうした症状が若年性双極性障害の特徴とされる症状によく似ているからです。

かくして、刺激薬の副作用によって双極性障害と診断された若者は、今度は双極性障害としての治療を受けることになるのです。

 まさに、精神医療と一生の付き合いがこうして始まるというわけで

す。


ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)

発売元 日本イーライリリー株式会社  2009年発売

http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1179050M1023_1_14/

カプセル5102540㎎がある。


 この薬は(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)と言われるもので、名前を見れば想像がつくように、最初抗うつ薬として開発されていました。しかし途中で、抗うつ効果がパッとしなかったためADHD薬として方向転換された薬です。

 添付文書には副作用発現状況として以下のようにあります。


「小児を対象とした国内臨床試験における安全性評価対象例278例中20975.2%)に副作用が報告され、主なものは頭痛(22.3%)、食欲減退(18.3%)、傾眠(14.0%)、腹痛(12.2%)、悪心(9.7%)であった。

日本人及びアジア人の成人を対象とした臨床試験における安全性評価対象例392例(日本人患者278例を含む)中31580.4%)に副作用が報告され、主なものは悪心(46.9%)、食欲減退(20.9%)、傾眠(16.6%)、口渇(13.8%)、頭痛(10.5%)であった。(成人適応追加時)」



副作用発現率の高さはコンサータと同様です。

さらにこの薬には重篤な副作用として、肝障害アナフィラキシーが挙げられています。

また、抗うつ薬の特徴的な副作用の一つである自殺念慮については、このストラテラも同様で、攻撃性増大という傾向も見られます。

しかし、こうしたことは日本で発売される前からわかっていたことです。日本より先駆けてこのストラテラが発売になっていた欧米では、以

下のような警告の歴史があるのです。こうしたことを承知で日本は2009年に発売となりました。


2005

イギリス=ストラテラが肝障害を引き起こす危険性について通知した。

欧州医薬品審査庁医薬品委員会=パキシルなどの抗うつ剤が自殺未遂、自殺念慮、攻撃性、敵意、反抗的行動、怒りを引き起こすとして、子どもの抗うつ剤服用に対して、それまでで最も強い警告を発行した(ここにストラテラも含まれている)。

アメリカ=ストラテラに対し、服用している子どもや若者に自殺念慮の危険性が増大するという「枠組み警告表示」の改訂を、イーライ・リリー株式会社に指示した。

カナダ=ストラテラが自傷行為のリスクを含む行動と感情の変化を引き起こす可能性について医療関係者に通知した。

2006

イギリス=ストラテラが、発作や鼓動間隔を長くする(QT延長)潜在的な危険性と関係があることを報告した。また、ストラテラをプロザックやパキシルのような抗うつ剤と併用した場合に心臓のトラブルを引き起こす可能性についても警告した。

カナダ=「ADHD」の治療薬として処方された全ての治療薬(ストラテラを含む)に対して、まれに突然死を含む心臓病の危険性があるという新たな警告を発行した。

オーストラリア=「ADHD」治療薬であるストラテラが攻撃性を引き起こしたという苦情を受けて、製造元の情報に警告を追加するように命じた。

2008

カナダ=前年までにストラテラの使用との関連が疑われる有害反応報告を189件受け、このうち55件が自殺企図と分類され、うち41件が小児(617歳)であったことを発表した。

ストラテラの製品の注意書きに「患者の年齢を問わず、自殺念慮、または自殺行動を示唆する他の徴候について、綿密にモニタリングすべきである。これには、激越型の感情や行動の変化、および症状悪化のモニタリングが含まれる」という文章を追加した。(以上)



そして、コンサータ同様、6歳未満の幼児に対する有効性及び安全性は確立していません。し、また、「作用機序」についても同様です。

「臨床における有用性には神経終末のノルアドレナリントランスポーターに対する選択的阻害作用が関与していることが可能性としては考えられるものの、明確な機序は不明である。」


 うつ病治療に抗うつ薬を処方された患者の約6割が双極性障害に移行しているという数字をアメリカのジャーナリストのロバート・ウィタカーは挙げていますが、まず抗うつ薬として開発されたこのストラテラ服用でもその可能性は同様でしょう。つまり、ストラテラ服用後に双極性障害へと移行する可能性です。


 ウイタカーは、著書の中で次のように書いています。


「大半の子どもは、最初にADHDと診断を受け刺激薬や抗うつ薬を処方され、治療効果が現れないか、または激高、不眠、興奮、言語促迫などの症状を経験していた。親たちはこれを俗に「跳ね返り/揺れ戻し」と呼んでいる。刺激薬、三環系抗うつ薬、セロトニン再取り込み阻害薬などの服用により躁状態や混合状態(自殺のそぶり、自殺企図を含む)が誘発または悪化した際に、初めて入院を経験するケースが多かった。」


 ADHDと診断され、服薬が始めると、その後の人生が精神医療と切り離すことのできないものになる可能性があるということです。

 このことはお子さんに薬を飲ませている親御さんは、つらい事実かもしれませんが、胸のどこかに刻んでおいてほしいと思います。少なくとも長期の服用の安全性は確立していません。やめ時を見据えつつ、他の方面からのアプローチを模索しつつ、こうしたリスクから子どもたちを遠ざけてほしいと願っています。















「あのときはあれだけの薬が必要だった」?

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 治美さん(仮名・38歳)という女性からメールをいただき、お話をうかがうことができました。体験談を紹介します。



過呼吸でデパス服用

 治美さんは25歳の頃、勤務中に過呼吸になり、その後も同様の症状が続いたため、近くの心療内科を受診しました。じつはそうした素地は高校生の頃からあったと言います。アトピーになり、それが原因かどうかわからないものの狭い空間にいるとパニック的になる。このとき出た過呼吸もちょうど同じような感じだったと言います。

処方された薬は、デパス、パキシル。

 当時は薬の知識もなく、医師の指示通り薬を飲みましたが、デパスのみでも症状が緩和されたため、パキシルは服用しませんでした。そのときデパス1㎎×3回(朝昼晩)、1日量3㎎。

 しかし、通院のたびごとに薬は増えました。メイラックス、マイスリー、ソラナックス。治美さんがとくに何かを訴えているわけでもないのに薬だけが増え、さすがにおかしいと感じたため、出された薬は飲まず、デパスのみを飲んでいました。

 それでも、今から思えばデパスの副作用……脱抑制となり、買い物依存気味になったこともあったと言います。

 しかし、「デパスは軽い薬」という医師の言葉を信じて、服用すること10年近く。

 その頃は1日のほとんどを寝て過ごすような生活になっていました。そして、デパスの量も増え、最初の2倍、6㎎を飲んでいたと言います。

 そんな娘の状態を見かねた父親に連れられて、治美さんは国立の精神科を受診することになりました。依存症を専門に扱う病院です。

 しかし、そこでは減薬の話は出ないまま、結局、同量のデパスが処方されただけでした。重症の人が多いその病院にしてみれば、「たかがデパス」という考えがあったのかもしれません。

ただ治美さんにしてみれば、これまで薬を飲んでいることは両親にも内緒にしていたため、これを機に知ってもらったことだけでも安堵感があったと言います。

 しかし、2013年、その優しかった父親が突然の自殺……。

 


転院

治美さんは不眠となり、医師はエバミールを追加しました。

 しかし、その後も不調は続き、落ち込んだ気分のまま治美さんは仕事も辞めて、横浜に転居。それにともなって転院となりました。

 転院先は横浜でも有名な大きな病院です。担当の医師は4050代くらいの物腰の柔らかい雰囲気の人でした。白衣は着ておらず、話しやすい雰囲気で、診察室には、医師の他に女性が1人いました。その人が、治美さんが話す言葉を一言一句、パソコンに入力していきました。後でわかったことですが、彼女は臨床心理士でした。

 医師に一通りの経緯を説明しながら、父親を亡くしていた治美さんの目からは涙がとめどなく溢れました。

 すると医師は、治美さんの手を取り、一緒に涙を流したと言います。臨床心理士も同様、涙を流していました。

 治美さんが言います。

「冷静に考えればおかしいんですけど、その時の私は一緒に涙を流してくれる人というだけで、医師を信用しました。初めて自分の悲しみを理解してもらえたと思って」

 最初出された薬は紹介状にあった通りのデパスとエバミールでしたが、その後、医師から療養のためと言われ、軽い気持ちで入院。

 それがまさかこんなことになろうとは……。



入院中の薬の量の異常さ

 その日の夜から突然、ものすごい量の薬が出るようになったのです。

 トリプタノール・サインバルタ・エビリファイ・サイレース・レメロン・レキソタン・デパス・デジレル・レボトミン・リボトリール・アーテン・ウブレチド……。

 抗うつ薬、抗精神病薬、ベンゾ系睡眠薬、ベンゾ系抗不安薬、抗パ剤、そしてなぜか排尿を促すためのウブレチド(抗コリン作用(抗パ剤)の副作用(閉尿)に対しての処方と思われる)。

一応、「うつ状態」との診断です。薬の説明は一切なし。しかも薬は一包化されていました。

 当然のことながら、その日の夜から脳が興奮状態に陥り、まったく眠れなくなりました。それを訴えると、更に睡眠薬が増やされました。

 意識は朦朧として、深い思考ができないまま、病院側からも「退院」という言葉が出ずに、結局3ヶ月も入院(つまり、上記の薬を服薬)してしまったと言います。

 体重が20㎏増えました。まったく別人のようになり、さすがにそれまで素直な患者だった治美さんも、これほどまでに太ったことから病院に不信感を抱き、退院を申し出ました。

 すると、その日から3週間、主治医は診察をまったく行わず(つまり放置されて)、行き詰った治美さんは当時相続の件で依頼していた担当弁護士に相談。すると、即退院許可が出たと言います。



離脱症状噴出

 退院と同時に、デパスを残して、自己判断ですべて断薬。当時は薬への恐怖感しかなく、離脱症状のことも知らず、やめれば体調がよくなると思っていたと言います。

「まさか、こんなことになるとは……」

 想像を絶する離脱症状から寝たきりとなり、入浴もできず、肌はボロボロ。顔面かさぶただらけとなり、さらに、10分と持たない頻尿、浅い呼吸、かすみ目、複視、聴覚過敏……。

 なかでもアカシジアの症状がきつく、あまりの辛さに救急に駆け込んだこともありましたが、離脱症状を理解されず、何の処置もされないまま帰されたと言います。

 そして昨年の10月頃のこと。これまですっかり忘れていたことだけれどと、治美さんから次のような内容のメールが来ました。

「離脱症状でいよいよ限界を感じて、衝動的に○○県(家から100キロ以上も離れた場所)にある▽▽橋(高さ100メートル以上もある橋)までタクシーで行き、飛び降りる寸前、タクシーの運転手さんが警察へ通報したため(してくださったため)、パトカーが何台もやって来て保護されました。

その後、〇〇県の精神科へ連れて行かれ、保護入院の可能性がありましたが、必死に訴え母親に迎えに来てもらい、事なきを得たことがあります。」



そうした経験を経ながら、いまデパス以外の薬をやめておよそ2年経過。私にメールをくれた頃(8月下旬)からようやく起き上がれるようになったと言います。

しかし、現在もほとんど眠れない状態が続いています。デパスは朝夕1㎎ずつで、日に2㎎まで減ってきました。

このままでは自分がだめになると思い、薬は増やさず、針治療に通い、規則正しい生活を送るように心がけています。減・断薬のブログを読んで、離脱症状はずっと続くものではないこと、いつかはよくなると信じて毎日を過ごしていると言います。

「実際、少しずつですが、こうしてブログを読んだり、人と話ができるようになったり、回復は感じています」と治美さん。

それでも眠れないのはやはりつらい。横にはなったものの朝までほとんど眠れない……。

近くにある睡眠障害専門の病院(そこは生活改善によって治していくという趣旨)を治美さんは最近受診したと言います。が、診察で話に出たのはやはり薬のことでした。メラトニン作動薬で、耐性、依存がないとの説明。しかし、治美さんは「もう薬は使いたくない」ため通院はしていません。


ところで、現在は最初父親に連れていかれた国立の病院に通っています。

そこでデパスを減薬していると言います。医師の指示は、0.5㎎を1週間ごとに減らしていくというもの。少しペースが早いようにも感じますが、一応離脱症状は理解しているそうです。

ただ、現在も離脱症状はかなり出ているようです。不眠はもちろん、うまく呼吸ができなかったり、ぐるぐる思考になったり、疑心暗鬼になったり……。

「脳がどうにかなってしまったんでしょうか。眠くて仕方がないのに眠りにつくことができません」



あのときはあれだけの薬が必要だった?

 治美さんは一度、あの入院時に大量処方をした医師――その後病院を辞めて、個人開業したそうです――に電話をかけて、当時の処方について説明を求めたと言います。

 医師は「当時はそれだけの薬があなたは必要な状態だった」「あのときは仕方がなかった」の一点張り。

 しかし、その医師が開院したというクリニックのホームページにはこんな文言があります。


「長年、精神科の治療をやってきて感じたことは、薬物療法は限界があることでした。

つまりお薬だけに頼ることなく、環境因子(家族関係、社会での人間関係、その他……)を見直していくことが必要であるということです。……」


いつその限界に気づいたのでしょう?

治美さんはあの入院によって「一瞬にして人生を奪われた気分です」と言います。本当に、なぜあのような薬が必要だったのか。「あのときは必要だった」とはどういう状態を指しての言葉なのか……?

治美さんが衝動的にタクシーに乗って橋に向かったのは、この医師が処方した薬の離脱症状の苦しさからでした。

父親の自死を経験したから治美さんの自死を恐れての薬の処方だったとしたら、この医師はまったく逆のことをしたことになります。

精神科には医師にとって「便利な言い逃れ」の言葉があります。それが通用してしまうところに、患者側と改革を促す点での「精神科の絶望」があるように感じられてなりません。












お知らせ2つ 散歩(神戸)茶話会(東京)

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 神戸で茶話会をお世話してくださった槙野さんから、秋の散策についてのお知らせをいただきました。

「秋の散策と茶話会@神戸」

日時 1115日(日)午後1時~


場所 神戸市立須磨離宮公園

    http://www.kobe-park.or.jp/rikyu/

集合 午後1時 離宮公園正面前

参加費 入園料400円プラスお茶代

申し込み port1083port1083@gmail.com

     槙野さんまで

主催 医療を考える会神戸

概要 紅葉がきれいです。散策と園内レストハウスにて茶話会を。



 11月、いい季節ですね。私も参加したいところですが、残念……。

 ぜひ大勢の方のご参加をお待ちしております。




医療を考える会

日時 9月20日(日)午後1時から5時

場所 豊島区巣鴨の施設(申込者に直接お伝えします)

申込 kakosan816@yahoo.co.jp (嶋田(かこ)まで)


参加費 500円
36名定員

 定例の会ですが、およそ3カ月ぶりの開催になります。まだ席に余裕がありますので、どうぞ。

今回から奇数月での開催で、次回は11月の下旬を予定しています。





4つの話題

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 今日は、最近出会ったちょっと気になるいくつかの事柄を取り上げようと思います。

 

ベンゾジアゼピン減薬中の抗生物質服用について

 アシュトンマニュアル(序文、7頁)には、ベンゾジアゼピン減薬中に抗生物質を飲むことに注意を促しています。(以下引用)

「何らかの理由で抗生物質は、時に離脱症状を悪化させることがあるようです。しかしながら、抗菌剤の一種であるキノロン剤は、実際にベンゾジアゼピンを GABA 受容体の結合部位から外します。これらはベンゾジアゼピンを使用中あるいは減薬中の人に、激しい離脱を引き起こす可能性があります。ベンゾジアゼピン離脱中に抗生物質を摂取する必要があるかもしれませんが、可能ならキノロン剤は避けるべきです(少なくとも 6 種の異なるキノロン剤があります。疑問がある時は主治医に問い合わせてください)。」

 

 じつはある方からメールで相談を受けました。

 ベンゾの減薬中で、歯科に行かなければならなくなり、このアシュトンマニュアルを読んでいたのでキノロン系の抗生物質は避けていたとのこと。それで、「クラリス」(マクロライド系)を服用。しかし、離人感がでてしまったために中止となったが、歯肉の腫れが引かなかったために「ミノマイシン」を処方されて飲んだところ、1日の服用で強烈な離脱症状がでてしまったとのことです。

 ミノマイシン(一般名ミノサイクリン)については、たまたまこのメールをいただく少し前、二つ前のエントリで、Aさんという方がコメントを入れてくれていました。

Aさんのコメント

「ミノマイシンは超が付くほどの強力精神安定剤です。インタビューフォームに書いてあります。類薬のドキシサイクリンはほとんど精神作用ないです。

ミノマイシンは処方量でも過量服薬状態のため、海外では常用する場合は体重別に用量が決まっています。日本ではこれが無いのが盲点です。そのため、短期間で薬剤性肝障害が出る薬として有名です。

ミノマイシンは一般的に血中濃度は男女差で1.6倍違います。(これは体重差によるもので性差ではないようです。FDAのデータから)

しかも、5日目で初回投与の2倍以上の血中濃度に到達します。蓄積性があるということです。

50kg以下の人であれば、一番小さい50mg錠を常用するだけで危険です。(感覚としてはエビリファイを40mgくらい飲んでるのと同じ)。」

 

 ウィキペディアにも詳しく書かれています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%8E%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%B3

 これらを見ると、ミノマイシンは中枢神経に作用して、自発運動を抑制するようです。

 また、統合失調症の精神症状改善を期待しての研究も進められています。

藤田保健衛生大学の大矢一登氏らは、抗精神病薬による治療を受けている統合失調症患者に対するミノサイクリン増強療法に関する総合的なメタ解析を行い、ミノサイクリンが統合失調症の精神症状(とくに陰性症状)を改善すると結論づけています。

つまり、ミノサイクリンは統合失調症の治療薬にもなりうる「強力な精神安定剤」なのです。

ベンゾの離脱症状を抱えながらの歯科治療で、抗生物質が使う場合は、こうした薬剤に気を付けてください。

なお、クラリス(マクロライド系の抗生物質)も、ベンゾとの相性はあまりよくないようです。ベンゾジアゼピンはCYP3A4で代謝されるものが多く、クラリスはCYP 3A4に対する阻害作用があるため(ベンゾの代謝が阻害され)、血中濃度が上昇し、作用が増強されます。これはあくまで飲み合わせの話ですが、離脱症状に関しても何らかの影響があるかもしれません。

 

藤田保健衛生大学病院

ところで、前出の藤田保健衛生大学病院ですが、この大学には抗精神病薬の「減薬シート」を作成した教授もいたりするので、「減薬」には前向きのようです。

しかし、その減薬の実際はというと……。

減薬シートそのものがまったく使い物にならない代物であるように、ここでの減薬もほとんどあてにならないようです。

実際、減薬指導を受けた方(のご家族からの話)がいますが、減薬スピードがかなり速いようですし、離脱症状への対応(理解)もまったくできていない……。勝手に減薬をしておいて、状態悪化。その挙句は「治験」を持ちかけてきたり、それでもまったくよくならないと「もう電気ショックしかない」と言ってみたり。

要するに、「減薬」など表看板だけで、中身がまったく伴っていないのです。伴っていないどころか、患者を死ぬほどの目にあわせて、最後は電気ショックしかないと言い放つとは、正直、怒り心頭です。そのせいで今もたいへん苦しんでいる患者、家族がいるのです。減薬をうたうなら、もう少し「本気で」減薬について勉強すべきです。

 

子どもの頃からの向精神薬服用について

 あるお子さんの話です。中学生の男の子。不登校気味となり、幻聴・幻視があり、精神科を受診したところ、即統合失調症との診断でジプレキサの服薬が始まりました。

 しかし、幻聴はほとんど改善なし。

 そして、お母さんから話をよくよく聞くと、小学生低学年の頃から、片頭痛で「デパケンR」を飲み続けているとのことでした。小学生に片頭痛でデパケン処方……。

 デパケンRの添付文書には以下のようにあります。

片頭痛発作の発症抑制に対する、小児における安全性及び有効性については、現在までの国内外の臨床試験で明確なエビデンスが得られていない。」

 なのに、デパケンR6歳児に処方。

 そして7年後、その子どもは統合失調症という診断を受ける。

 

 この二つの事象の関連性は立証できませんが、無関係とも思えません。

子どもへの向精神薬の安易な投与、長期の服薬は、こういう流れを作りやすいです。だから、子どもへの投薬は慎重にも慎重であるべきなのです。

そのときは大きな副作用を経験しないかもしれません。が、飲み続けることで、その後の人生を、結果的に「病者」のそれにしてしまう可能性が大いにあるのです。

しかも、デパケンRの添付文書には以下のような文言もあります。

「片頭痛患者においては、本剤投与中は症状の経過を十分に観察し、頭痛発作発現の消失・軽減により患者の日常生活への支障がなくなったら一旦本剤の投与を中止し、投与継続の必要性について検討すること。なお、症状の改善が認められない場合には、漫然と投与を継続しないこと。」

 にもかかわらず、7年もの漫然処方。

 そして、新たに受診した精神科医は、その子どもの服薬歴になど目もくれず、そのとき出ている症状、訴える症状のみに対して投薬を行います。飲み続けた薬が脳に与えた影響と、今の症状とはまったく無関係であるとでも言うように。

こういう「医療」をどうたとえればいいのか、もう言葉が尽きそうですが、ともかくあまりに医師が「視野狭窄」に陥っているとしかいいようがありません。

 子どもへの長期向精神薬処方はリスク大です。子どもの人生全体で投薬をとらえるべきです。

 

赤城高原ホスピタル

 先日、赤城高原ホスピタルに行ってきました。といっても、フリーのライターとして取材のためにというわけではなく、付き添いという名目です。

 中に入って、いろいろお話をうかがってみて、ベンゾジアゼピン等の減薬や離脱症状について、精神保健福祉士をはじめ、医師も、ある程度理解はあるように感じました。理解はあるけれど、実際はどうかはよくわかりません。

が、ともかく、「絶対薬をやめたい」という固い意志があれば、それを無視して薬を盛ることはないようです。

 じつは、4年ほど前にも、ある方を入院させるためにこの病院に出向いたことがありました。PSWの面接から医師の診察まで付き合いましたが、あのころより病院スタッフの「減薬」についての理解は深まっている印象を受けました。

 4年前に付き添った方は、多剤大量処方の末、自分で減薬を続けて、最後、ロヒプノール1㎎が切れずに入院を決断しました。診察のとき、担当医は「ロヒプノールの置換薬としてデグレトールを」と指定してきました。

 翌日からロヒプノールをテグレトールに置換して、しかし、結局かなりの離脱症状に苦しみながら、それでも一応「断薬」はできました。

が、離脱症状に対して病院側のフォローは一切なしでした(今もそうかもしれません。それは覚悟しておいたほうがいいようです)。そしてその方の離脱症状は退院後もかなりしつこく続いていましたが、それも自分で耐えるしかありません。

 それでもともかく「断薬」はできたわけです。

 しかし、今回このエントリを書くにあたり、改めてアシュトンマニュアルを読んでみたところ、以下の記述がありました。長いですが、参考のために引用しておきます。

 

「ベンゾジアゼピン離脱の臨床試験で、複数の薬剤について、離脱プロセスを速めたり、離脱症状を予防あるいは緩和したり、長期的な成功率を改善させたりするのかどうかについて検討されました。……

米国で行なわれたベンゾジアゼピン長期服用者の離脱についての最近の研究では、鎮静系抗うつ薬(トラゾドン塩酸塩[レスリン、デジレル])および抗痙攣薬(バルプロ酸ナトリウム[デパケン、セレニカ])の効果が試されました。どちらも、離脱症状の激しさに何の影響も及ぼしませんでした。しかし、減薬の速度は、ベンゾジアゼピンの用量を毎週 25%ずつ減量していく速さでした。これはかなり急速な離脱です!

 46 週間の離脱の試験において、ほとんどあるいは全く効果が見られなかった他の薬剤として、ブスピロン(抗不安薬)、カルバマゼピン(テグレトール、抗痙攣薬)、クロニジン(カタプレス、時にアルコール解毒に用いられる抗不安薬)、ニフェジピン(アダラート)、アルピデムがあります。」

 

 しかし、テグレトール、バルプロ酸(デパケン)は、離脱症状自体は軽減しないものの離脱の成功率を高めたとの報告があるようです。離脱の成功率を高めたというのがどういうことなのかわかりませんが、服薬という行為による「プラセボの効果」という役割を果たしたのかもしれません。

 ともかく、赤城高原ホスピタル……周囲を自然に囲まれて、散歩をするにはよいところです。医師との距離の持ち方を割り切る必要と、自身の意志力が求められますが、「場所」として利用するというのも一つの方法かなと思います。

 

 

 


発達障害支援センターと精神医療の密な関係

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 以前体験談を掲載したユキさんについて、その後のことをお伝えします。

 http://ameblo.jp/momo-kako/entry-12047303668.html

発達障害と診断をされると、同様の状況に置かれる方もたくさんいると思いますが、こうしたやり方に、私は正直、一種の「暴力」さえ感じてしまいます。あまりに強い「医療信仰」、薬を飲めばなんでも治ると頑なに信じ込んでいる頑迷さ……。

 

現在ユキさんは薬はまったく飲んでいませんが、以前は精神科の▽▽病院に通っていました。主治医の女医は「あなたの状態を見る限り、一生薬を飲み続けなければいけない。特にSSRIは欠かせない」という意見。

何も症状を訴えていないのに「自閉症スペクトラム」という診断だけで服薬をしなければならないという方針です。

精神薬の薬害にあい、苦労して断薬をしたユキさんにしてみれば、再服薬など考えられません。そこで知人に相談をし、アレルギー専門の医師(◇◇アレルギークリニック)に診てもらえることになり、そこに通院し始めると、それまで苦しめられていたフラッシュバックや離脱症状等がかなり改善されたと言います。

しかし、そこは精神科ではないため、相談支援事業所職員からは、しつこく「なぜ▽▽病院に通院しないのか」と電話がかかってきました。

そこでユキさんは、きっぱりと相談支援事業所の職員に対して、「私はもう▽▽病院には行きません」と言い、また、

「▽▽病院の関係者と今後私の件で連絡を取るのは一切やめてください。役所や保健所、その他関係機関とで▽▽病院に行かないことなどで情報を共有するのはやめてください」と伝えました。

 前回のエントリではここまでお伝えしましたが、その後、またしても相談支援事業所から発達支援センターへとつながり、思いがけない展開になったとユキさんから「憤りの電話」をもらいました。

 その後メールも届きましたので公開させていただきます。

 

 その前に一つ、相談支援事業所というのは、自治体から委託された事業所が行う福祉サービス事業のことです。

利用者は無料で受けられるサービスですが、相談件数や利用者が増えるほど自治体からお金が入る仕組みになっています。

一方、都道府県や市町村単位の「発達支援センター」は公立ですから、相談件数や利用者が増えることでお金が絡むことはありませんし、スタッフは全員自治体職員(=つまり公務員)です。

 

相談支援事業所から発達支援センターへ

9月中旬のことです。ユキさんは久しぶりに相談支援事業所に行きました。そうしたところ、事業所の人からいきなり、

「あなたは病識がない。発達支援センターを受診し、もう1度アセスメントしてもらった方がいい」と言われ、相談予約を取ることになったと言います。

いつもは数ヵ月待ちなのに、その日はたまたま翌日に予約が取れました。

 

以下ユキさんからのメールを紹介します。

「相談支援事業所の職員が、なぜ「受診」という言葉を使ったかというと、私の住んでいる県の発達支援センターは精神科医並の専門知識を有する(と思っている)ため、精神科医並に権力がある人と、医療者側も教育者側も、福祉関係者も行政も家族会も、みな思っています。

しかし、発達支援センターには臨床心理士はいますが、精神科医は1人もいません。ただ、発達支援センターの職員は、精神科の先生と同等、もしくはそれ以上に権力を持っており、〇〇県では絶大な支持を得ています。

 

久しぶりに発達支援センターを「受診」

予約した通り、翌日発達支援センターを受診しました。ここに来たのは久しぶりのことです。担当者に現在の報告とアレルギークリニックの◇◇先生にかかっている旨を話しました。

するとまず言われるのが、

「うちに来ている人は▽▽病院(精神科)に通院している人が多いけど、みんなそこに行くと体調よくなっているよ。うちに来ている人で薬の副作用で体調を崩してる人は見たことない。▽▽病院の人たちは発達障害支援においては全国レベルで支援体制が整ってるからね。とにかくドクターも臨床心理士もエビデンスレベルが高く、質の高い医療を提供していて、本当に見習うことばかり」そういった言葉から話が始まります。

 

 次に、「相談支援の技法は大きく分けて2種類ある」との説明を受けました。

1つは実社会で生活を積みながら、相談支援事業所に通う方法。

 もう1つは精神科を定期通院し治療を受けながら、SSTなどの精神療法を受ける方法」

 そして、私の場合、相談支援事業所に行っても何も変化がなかったから、前者のアプローチは無理だろう。だから、精神科(▽▽病院)に通院し、服薬治療を受けながら、主治医の指示に従って治療を受けるのが先。

▽▽病院の××医師(女医)の見立てはすべて専門的な見解ではあっており、あなたは今は社会に出れるような状態ではない。福祉就労もまだ難しいため、まずは服薬治療しながらデイケアで訓練を受けるべき。発達障害は精神安定剤で日常生活に支障がないレベルまで症状を抑えることが可能です」

と発達支援センターの方に言われました。

 

 私としては以前の経験から、精神安定剤より漢方薬の方があっていることも伝えましたが、支援センターの職員は、

「◇◇先生は精神科ではないから行かない方がいい。◇◇先生の所に行っても治らない。◇◇先生の所に行くくらいなら、ちゃんとした病院(精神科のことです)に行って、合う精神安定剤を見つけるべき。見つからない場合は、入院してどの薬が1番合っているか探すこともできる」と言われました。

 

しかし、◇◇先生のところに行ったら、十数年出ていたフラッシュバックもよくなり、今はフラッシュバックで生活に支障が出ることもなくなりました。精神安定剤だと何一つよくならず三次障害まで出ていたのです。

さらに職員は、「再検査もあえて受ける必要はない。療育センターの心理検索の結果が間違っているとは思えないし、本当にレベルの高い精神科医であれば問診で行動観察を行う技術もあるのですぐあなたの様子はわかる」と医療信仰のすごさです。

また、現在私がやっている活動(あるボランティア活動)もすべてやらない方がいい、とも言われました。私が関わっている団体について話をしたら、職員は

「そこの団体にあなたの本当の今の症状を伝えて、苦情を入れてやるから、担当者の名前・役職、住所、電話番号を教えなさい」

と命令されました。

あまりにも人を小馬鹿にした言い方だったので教えませんでした。

 

精神科の病院を受診しなさい

さらに、発達支援センターの職員からは、

「自分の見ている前で、今すぐ▽▽病院に受診予約を入れなさい」

と命令されました。

もう逃げられないと思い、私は▽▽病院に電話を入れ、受診予約を入れる“フリ”をしました。

ただし話している内容はすべてメモを取られました。

「カウンセリングとデイケアを受けたいから受診予約を入れたい」と私が言うと、あとで職員から、

「カウンセリングとデイケアを受ける必要があるかどうか判断するのは精神科医だ!

あなたのやっていることはドクターに対する反逆行為だ!」と怒鳴られました。

▽▽病院の予約受付係は上記については何一つ触れませんでしたが。

また、その人は「▽▽病院には、結局、あなたの思い通りの治療を受けられないから行くのをやめたんでしょ? はっきり言ってそれは身勝手というものだよ。

ちゃんと主治医の指示通り服薬すれば、発達障害の『症状』も治るし、カウンセリングやデイケアを受ければ更に早く治ります。

また多剤大量処方であればあるほど症状は早く治ります。薬をたくさん飲めば飲むほどそれだけ早く症状は治ります。

薬は発達障害の人に飲ませても科学的に安全と証明されている有効な治療法です。それで状態が悪化することはあり得ません」と言われ、

最後に、相談支援事業所の人に今日話したことの報告と、▽▽病院の受診日が決まったら発達支援センターにも連絡するように約束したところで終了しました。

 

実は発達支援センターの対応で困っているのは今に始まったことではありません。

私の担当である専門相談員は、心理系の資格所持者で、成人当事者の職場適応支援や就労支援を担当している職員です。

私の知り合いの成人当事者も何人かこの方の相談に通っている人がいますが、とにかく精神医療につなげたがる人です。

 上記の精神的虐待(?)に近い行為は、今の担当に変わってから、ずっと、それも年単位で続いています。

今回のような酷い対応は今までありませんでしたが、この担当は私のことを「妄想・虚言癖の症状がある」と見ています。

発達支援センターでは今の担当になる前は違う人に相談していますが、その当時は「幻聴・幻覚・被害妄想の症状が認められる」と言われていました。当時は抗精神病薬、抗不安薬、眠剤などを処方されていた時期でした。

実際、今の担当者からは、

「発達障害に加え、統合失調症の症状がある」と疑われています。もちろんこの担当は心理系の資格だけで精神科医ではないので診断はできません。

しかし、私が「自分は過去に精神科の先生から統合失調症ではない」と言われたと伝えると、いぶかしそうに首を傾げていました。

 

年金申請のために精神科とは縁が切れない

相談支援事業所の指示で発達支援センターに行きました。久々に行ったのですが、あんなところ二度と行きません。

▽▽病院の女医にも二度と診てほしくありません。

しかし、現在障害基礎年金をもらいながらの生活なので、今すぐ精神科と縁を切るのは難しいです。

 そこで、紹介状がなくても受診できるクリニックを探して、受診することにしました。(診察理由は発達障害の再検査です)

そこで、薬のことは今のところ何も言われてませんが、◇◇先生(アレルギーの)いわく、

「安定剤処方されても絶対飲まないでね。もし安定剤処方された場合は受診の時にすぐ相談してね」と言われています。

 ともかく、今はこのクリニックを頼りに、障害基礎年金の申請をしようと考えています。

また、発達障害の人は発達支援センターを利用するよう義務付けられているわけではないので、支援センターとは縁が切れても申請に不利に働くことはありません」

 

以上がユキさんのその後の経過です。

ここにはいくつかの問題がはっきり見えています。

まず、発達障害と診断された人を取り囲む支援側の職員の「精神医療の盲信」です。薬さえ飲んでいればいいという有無を言わせぬ前提で物事を運んでいく姿勢。

また、発達障害としてさまざまなサービスを受ける場合、精神医療がセットになっている点。

つまり、発達障害と診断をされて、サービスを受けるためにはかなりの確率で服薬しなければならないのが現実であるということです。

発達障害と精神医療がなぜこうも密接な関係でつながってしまったのか?

さらに、これはユキさんも感じていることですが、相談支援センター、発達支援センター、精神科の病院が当事者の情報を共有しているらしいことです。もちろん、統一された「支援」を行うためには必要なこととという前提(言い訳)はあるのでしょうが、これでは一度「相談」をした利用者はすべて丸裸にされてしまいます。したがって、ユキさんのように精神科の薬を飲んでいない利用者はアウトリーチの対象になりやすいのでしょう。

こうした「支援事業」がどこまで利用者にとって有益なのか。

支援とは精神医療につなげることという短絡的な考えに陥っている職員が多い可能性も否めない現状では非常に疑問に感じます。

発達障害者への本当の意味での支援とは? 

困難な課題ですが、少なくとも精神医療を前面に出しての支援は、決して本当の意味での支援にはならないことを相談担当者には知ってほしいと思います。

発達障害と精神医療の関係にはこの相談事業が大きな役割を果たしています。

統合失調症検査入院……誤診が判明

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 30歳の女性、MSさんの体験談を紹介します。

 MSさんは9年前、21歳のときに「記憶障害」による「身の危険」ということで精神科へ措置入院となりました。幻聴もあったため、その病院の担当医から統合失調症との診断を受け、ご多分に漏れずの抗精神病薬、その他の多剤大量処方の治療となりました。

リスパダール、エビリファイを主に、効果がなければ薬の変更、追加となり、さらにはベンゾジアゼピン系の抗不安薬と睡眠薬(とくに短期作用型のハルシオンやマイスリー)、また抑うつ症状がひどいときには抗うつ薬(SSRI)も処方。アカシジアや目が開かないと副作用を訴えると、アキネトンやパキソナールなど抗コリン作用の抗パ剤がすぐに処方されました。当時飲んでいた薬は記憶できないほど多種類だったとMSさんは言います。

 当然のことながら、認知機能が低下して、その頃通っていた専門学校の勉強もままならなくなり、さらに薬を飲んで5年ほど経った頃には首がねじれて右を向けない状態に陥ってしまいました。



検査入院を希望する

 昨年の春のことです。MSさんは、こうした現状からどうしても抜け出したいと思い、ある大学病院への「検査入院」を希望し、当時の主治医がその大学病院につないでくれました。

「検査入院」とは、「本当に統合失調症であるかどうか」を検査するための「統合失調症検査入院」のことです。

「統合失調症検査入院」は北海道大学病院で行っています。

 http://www.huhp.hokudai.ac.jp/hotnews/detail/00000474.html#a2_3


 MSさんが受けた検査は、まず「聴覚性事象関連電位」を調べるというもの。

頭部に電極を付けて、画像を見ながら音を聴き、脳の働きを調べました。これについては論文が一つネット上にありますので、参考までに。

http://www.researchgate.net/publication/36429001_  


そして、この検査の結果、MSさんには統合失調症に見られる特徴的な所見がまったく見られないことがわかりました。さらに、MRI検査や認知能力検査、心理検査、知能検査、また精神科医による細かい問診なども行われ、その結果、被害妄想傾向や人格の破綻がないことが判明。

MSさんは、統合失調症ではなく、解離性障害と診断が見直されたのです。

また、同大学病院の専門医によって、首の状態は「頸部ジストニア」と診断され、その時点で、抗精神病薬、その他の薬は中止となりました。


解離性障害

そもそもMSさんの症状は、14歳くらいから、自発的な自傷として現れていました。夜や明け方の数時間、まったく記憶のない時間帯があり、その間に自傷行為(主にアームカット、リストカット)をして、気が付いたときには、手当てまでしてあったと言います。

そして、19歳のとき、大学に受かって一人暮らしを始めた頃から、症状はひどくなり、さらに、幻聴も聞こえ始めました。

幻聴は、最初はアパートの外で深夜に誰かが騒いでいるような声が聞こえて、外を確認しても誰もいないというようなものでした。たびたびというわけではなく、たまにそういうことがあったという程度です。

しかし、通学は困難となり大学は中退することになりました。その頃は、自分の声で(骨伝導で聞こえる自分の声のような)、自分を批判する声が毎日のように聞こえるようになっていましたが、これは、検査をした医師によると、解離性障害に付随する神経症的なものから来ていたのではとのこと。



8年間の統合失調症治療

統合失調症との診断が下ったのは、21歳のときです。またしても記憶のないまま自傷をして、その傷が何十針も縫う大けがとなり、措置入院となりました。幻聴もあることから、すぐに統合失調症との診断です。

そして、抗精神病薬を中心とした統合失調症の治療を受けることになったのですが、副作用や首の違和感を覚えながらも延々8年間、統合失調症のまま薬物治療が続いたのです。

本来なら必要のない薬。つらい副作用を経験したばかりか、なかなか改善の難しいジストニアを発症してしまったというわけです。


 聴覚性事象関連電位と統合失調症との関係がどれほど「真実」なのかは、わかりません。また、光トポグラフィーと比べて精度が上なのかどうかも……。

 ただ、8年間統合失調症として治療を受け続けてきた人に、統合失調症ではないと、診断を見直すきっかけになったのが、この検査方法だとしたら、少し期待をしてみてもいいのかなという印象を抱きました。

 

 それにしても、MSさんの最初の医師(統合失調症と診断した医師)がきちんと鑑別していれば、こんなことには……と思わないわけにはいきません。

 幻聴≒(あるいは=)統合失調症という、重大な病気の診断を下す際のあまりに安易な診断基準がどれほど誤診を生んでいるか。

 統合失調症診断の際に除外すべきものとして、解離性障害など最初に頭に浮かぶものではないかと思うのですが……。


遅発性ジストニアの治療

 痙性斜頸(ジストニア)の治療は、検査入院をした大学病院のリハビリテーション科で、4ヶ月ごとに5回のボトックス治療を受けましたが、症状の緩和だけで病態自体は悪化していると言います。また、地元の精神科で筋肉の緊張緩和と神経痛のために

ランドセン(リボトリール)

テグレトール

が処方されているそうです。

しかし、この地元の精神科と大学病院のリハ科との連携が取れておらず(互いにかなり離れたところにある施設ゆえ)、この点はMSさん自身が双方に細かく状態を説明することで解決するしかない状況です。



ジストニアと共に

 現在では解離性障害の症状はすっかり改善し、そのための薬は一切処方されていません。精神科での治療は、主にカウンセリング的なもので、自分の状況や記憶について思い出しながらいろいろ話をしていくというものです。

 ただジストニアという症状は残ってしまいました。

ジストニアはその認知度も低く、MSさんの場合、障害者手帳も取得できなかったと言います。認定の基準が自治体によりまちまちのようで、たとえば大学病院のある自治体ならMSさんの状態であれば肢体不自由5級は当たり前に通ると言われたそうです。

ジストニアについて知識がある認定者がどれほどいるのか疑問もあり、またジストニアに関して身体障害としての認定基準がきちんと設けられていないというのも、おかしなことです。

それでも、MSさんは8年間の誤診の上の投薬を恨むより、もう罹患してしまったジストニア原因を追求するより、これから先のことを考えたいと言います。

「何とか症状を緩和させながら、社会復帰への道筋を探していくことが(過去にとらわれるより)有益じゃないかと考えています」

 前を向いているMSさんには頭が下がるばかりですが(私がMSさんならと思うと……)、私には、誤診の上に8年間も不必要な薬を投与し続け、このような重大な後遺症を残すことになった現在の精神医療の質の低さを追求したい気持ちがあります。

 だから、安易な診断(誤診)は問題なのです。

だから、こうした薬を気軽に子どもに投与することに警鐘を鳴らしたいのです。

 

 NPO法人ジストニア友の会HPより

● ジストニアには、具体的に次のような症状があります。

・首が上や下、左や右に傾く

・首がねじれる

・足がねじれる

・身体が歪む

・まぶたが勝手に閉じようとする

・口が開いたままで閉じられない、閉じたままで開けられない

・唇が突き出る、あごが左右や前にずれる

・舌がくねくね動く、口の外に出る

・声が出ない、出しにくい

・鉛筆や箸が持てない、持ちにくい

・字が書けない、書きにくい

・ピアノ・ギターなど特定の楽器が弾けない、弾きにくい


● 遅発性ジストニア

主として抗精神病薬の長期投与中(数か月~数年)に起こり、ドーパミン遮断作用をもつ抗うつ薬、抗めまい薬、制吐薬、胃腸薬、カルシウム拮抗薬によっても起こることがある薬剤性の二次性ジストニアです。

・病因はドーパミン、アセチルコリン、ノルアドレナリンなど多様な神経伝達物質の異常と考えられています。










何度でも、コンサータ

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 ADHD薬のコンサータ(メチルフェニデート)に離脱症状はあるのか?

 コンサータを2年ほど飲んでいる子ども(9歳)の話である。

以前お母さんにお会いしたことがあり、私からは、コンサータについて情報と、「あまり長期間飲まないほうがいい」といったようなことを伝えておいた。

先日、久しぶりに会ったところ、「実はこの夏休みに薬をやめていた」とのこと。「よかったじゃないですか」と喜んだものの、「いやあ、でも……」と続いた話は以下のとおりである。

まず、薬をやめたいと医師に相談をすると、「あ、そう、じゃあ、やめたら」の一言で、コンサータ27㎎を一気に切ることになったという。

「この薬は一気にやめても全然問題ない」というのが医師の見解。

 ところが、である。

 それ以降、子どもは、それまでしたことのなかった「おねしょ」をするようになった。

 また、体が「だるい、だるい」と始終言い、

 さらに、母親もびっくりするくらいの食事の量。

(これはコンサータの副作用の一つ、食欲減退が亡くなったためと思われる。)




 あまりの体のだるさに、こんな状態では学校に行くことができないので、新学期を迎え、結局、薬は戻ってしまったという。

 医師に相談をすると、またしても「あ、そう、じゃあ、出すね」とだけ。

 薬をやめたい母親の気持ちを汲むこともなく、なぜこういう状態になったのかの説明もなく、薬をやめるにはどうすればいいのかの知恵もなく・・・。

 そもそもコンサータは、登録医しか処方できず、したがって専門性を持ち合わせているという前提のはずなのだが・・・



「コンサータ 離脱症状」という言葉で検索すると、さまざまな情報が出てくる。

 なかでもびっくりするのは、「コンサータをやめさせたい」という母親の質問に対して、「いや飲み続けたほうがいい」という回答があったりすることだ。

「私の、意見で申し訳ありませんが、もしも中学生以前なら、服薬を続けた方がよいと思います。率直にそう思います。

理由は、思春期になると、多動の子はいろいろと問題を抱えやすいからです。人間関係のもつれから、二次障害を起こすこともあります。

だから…大切な、思春期の時期を乗り越えるためにも、服薬は必要かと…」



 こういうアドバイスの場合「薬をやめたほうがいい」というアドバイスより(薬をやめるように言うのは、とても危険なことかもしれない)、「飲み続けたほうがいい」というアドバイスのほうが、他人の意見としては「無難」だろうから、そういう回答が出やすいのだろうが、私の立場から言わせれば、やはり無責任としか言いようがない。

 前にもコンサータの副作用や長期服用に関しては記事にしたが、さらに今回は浜六郎氏の論文を引用します。

 こんなのを読んでもなお、やめたいと言っている母親に対して「いや、飲み続けたほうがいい」と言えるのだろうか。




浜六郎の臨床副作用ノート ~メチルフェニデートによる精神病~

 http://medical-confidential.com/confidential/2013/02/post-512.html


覚醒剤としての害のパターン

 米食品医薬品局(FDA)に集められている世界中のメチルフェニデートの副作用(害反応)報告(即効錠のリタリンもふくめたもの)の分析では、15000件近くの報告に約5万件もの副作用名が記載されている(https://www.rxisk.org/Default.aspx)。

 その中で目立つ害反応は、精神病・統合失調症関連反応、自殺・殺人など自害・他害行為、突然死、成長障害などである。精神病224件、統合失調症関連反応47件、幻覚253件、幻聴138件、幻視147件、妄想・パラノイア207件、自殺関連950件(自殺既遂186、自殺企図293、自殺念慮385など)、攻撃性・敵意・激越1070件(殺人17、殺人念慮33、攻撃性544、激越361など)、突然死71人、成長遅延198件、成長ホルモン欠乏または減少15件、思春期発現遅延14件、うつ病416件、不整脈101件、うっ血性心筋障害21件、などである。

 成長障害は、おそらく摂食障害と成長ホルモン減少のためだと考えられている。男性の性的成熟の遅れが報告され、動物実験でも確認されている。


依存・うつ病・感作(逆耐性)・精神病・心毒性

 生後20日から35日までの小児期の動物(人の6歳から12歳に相当)にメチルフェニデートを投与しておくと、成熟してから、砂糖など自然の快感に鈍くなり、新しい環境で動きが鈍くなり、うつ傾向が増し、難問に遭遇して行動を停止し、性行動が減退するようになった

また、ストレスを加えると、より多くのステロイドホルモンを分泌するようになった。つまり、より強くストレスを感じるようになったことを示している。

コカインに過敏反応(感作)を示した実験結果もある。

これらの結果は、通常の刺激に鈍くなる(耐性)、不安が増す、うつ病が生じる、ストレス刺激に対する感作が成立するという、典型的な覚醒剤中毒症状がメチルフェニデートでも生じるということを意味している

 感作は、覚醒剤を使っていて中止後、再使用時には、以前より少量で過剰反応が生じる現象をいう。その際、当初得られていた快感は少なく、不快な症状が過剰に現れるのが特徴である。小さな刺激でも、より強くストレスを感じるようになるのは、自己のアドレナリン等カテコラミンに対して過敏反応を生じるためと考えられる。

 実際、覚醒剤精神病がメチルフェニデートで報告されている。ADHDと診断された192人の小児のうち98人にメチルフェニデートが用いられ平均19か月観察した結果、9人に精神病症状が出現し、うち3人は典型的な覚せい剤中毒性精神病の診断基準に合致したものだったという。中止によりおおむね改善したが、その後、3人には精神障害(1人は広汎性発達障害、2人は双極性障害)が持続した。他に、11人(12%)にうつ病が生じ、うち1人は入院を要した。

 覚醒剤を繰り返し用いると、脳の神経細胞が興奮毒性により壊死し、脳内の報酬系神経系統に独特の神経回路が出来上がり、しかも、その神経回路形成に必要なたんぱく質を作る遺伝子に恒久的な変化が生じる結果、その回路がいったんでき上がると、元に戻らなくなるとされる

 そしてメチルフェニデートによる興奮毒性増強作用や、でき上がった神経回路の特徴は、アンフェタミンなどでできた神経回路の特徴とよく似たものであった。

 メチルフェニデートは交感神経を刺激し続けるため、心毒性があり、心筋傷害や弁膜症、重症の不整脈から突然死も起こる

(略)


覚醒剤としての長期安全性調査は不十分

 覚醒剤を小児に使用して安全かどうかの判断には、無治療ADHD児と、メチルフェニデート使用ADHD児の長期比較が必要である。

 2つのランダム化比較試験で短期間(12週間もしくは18週間)メチルフェニデートを用いた子39人とプラセボを用いた子63人(試験時年齢は7歳~12歳)を、試験後は薬物を服用せず平均16年間追跡した。薬物依存の割合は、メチルフェニデート群では41%、プラセボ群は36.5%で有意の差はなかった、とされた。しかし、メチルフェニデート使用群では、複数の薬物に依存状態になっている子が多い傾向があった(1人平均の薬物依存が0.850.70)。したがって、メチルフェニデートが用いられた期間が長期で大人数を追跡すれば薬物依存が生じうる可能性は否定できない

 ADHDの子218人とADHDでない子182人を(ADHD児は、メチルフェニデート不使用と、1年未満使用、1年以上使用の3群に分けて)長期間追跡し、アルコールやマリファナ、コカインなどの薬物依存の罹患を調べた調査では、コカイン依存は、非ADHD(年齢マッチ)10%に対して、メチルフェニデート不使用ADHD15%、1年未満使用ADHD18%、1年以上使用ADHD27%と、メチルフェニデートの使用期間が長いほど依存の割合が高かった

 ADHDの程度が強いほどメチルフェニデートも長期に使われる可能性があり、それが交絡している可能性は否定できないが、メチルフェニデートの性質からして、依存の害を否定することも出来ない。覚醒剤精神病でも、半数以上が1年以上連用後に生じているため、このデータも決して無視できるものではない。

現時点での結論

 コンサータの成分メチルフェニデートは覚醒剤であり、一時的な使用でも、精神にも身体にも不可逆的な害を与える危険性が高い。














お知らせ

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 じつは家族の介護問題が発生し、ブログの更新がなかなかできません。

 私は一人っ子です。両親健在ですが、父88歳、母85歳。私は家を出ており、これまで老老介護で二人で何とかやっていました。

 しかし、母が入院となり、いまは電車で2時間ほどのところにある実家に私が帰って、病院と家の往復、また父の面倒をみています。

 そろそろ退院の話も出ていますので、また何とかブログもやれると思うのですが、退院したらしたで、食事の用意など、母にはすぐには無理でしょうから、しばらくは私の手が必要です。ヘルパーさんを頼もうと思っていますが、申請してから1ヶ月ほどかかるようですので、すぐの利用はできません。

 超高齢社会である日本の介護の基本は結局「家族」なんですね。(精神医療と同じです)。

 利用できる社会的サービスはいろいろありますが、そのサービスを受けるための書類にサインをするのは家族です。つまり、サインできるだけの頭と体がそろっていないと、手続きも難しいというのが大方の現状です(もちろん、成年後見人制度などありますが)。

 安倍ちゃんは「介護離職ゼロ」など今回の内閣改造の際、舌足らずの口で言っていますが、実際どうやって? これが落ち目の人気をつなぎ留めておくためだけのリップサービスではないことをぜひ証明してほしいと思っています。


 

 ブログの更新は止まっていますが、茶話会は10月11月12月と埼玉、東京、神奈川と今のところ、開く予定でいます。

 また、現在、私が特に興味を持って勉強を続けている「発達障害」について、数人の方から体験談をうかがったりもしています。

 発達障害の問題は、関わる分野が多岐にわたるためたいへん難しいテーマですが、子どもと精神医療という点では、絶対に避けて通ることのできない問題です。いや、子どもに限らず、いまは大人の発達障害も大流行りで(たくさんの書籍が出て、雑誌でも特集が組まれたりしています)、この問題を無視して精神医療問題を語ることは(それがいいとか悪いとかという土俵ではなく、そういう物差しがすでにあるという意味で)、今となっては片目で世界を見ているに等しいようにも感じています。

 発達障害について(否定、肯定どちらでも)、情報がありましたら、ぜひお知らせください。体験談でもいいですし、とらえ方、考え方を伝えていただくのでも結構です。

 (コメントをいただいても、現在、お返事が難しい状況ですが、必ず目は通しています)。

茶話会のお知らせ(多摩・横浜・東京・埼玉)

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 各地茶話会のお知らせです。

 今回から、専用のメールアドレスを作りましたので、そちらにお申込みをお願いします。

 また、週に一度、まとめてご連絡いたしますので、すぐにお返事が届かない場合があります。



 以下4か所とも関東圏ですが、離脱症状を抱えている人には、同じ関東圏内でも、距離的に近く、多少の土地勘のあるところのほうが参加しやすいとの意見をいただきました。少人数でも各地で開くことの意味もあると思います。どうぞお近くの茶話会にご参加ください。




 東京多摩茶話会

  10月31日(土) 午後1時から午後4時30分


  (立川近くの会場)

  申し込み  sawakai02@gmail.com

  参加費 500円




 横浜茶話会 

  11月8日(日) 午後1時から午後5時

  申し込み  sawakai04@gmail.com


  参加費  500円



  紅葉の井の頭公園と動物園散歩

    11月15日(日) 午後~

    申し込み sawakai02@gmail.com


 

東京茶話会


  11月22日(日) 午後1時から午後5時

  (巣鴨近くの会場)

  申し込み  sawakai01@gmail.com

  参加費  500円



 埼玉茶話会

  12月6日(日)午後1時から午後5時

   (大宮近くの会場)

  申し込み sawakai03@gmail.com


  参加費  500円

 

  











講演・・・発達障害なんかない?

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 久しぶりにブログを更新します。

 家のことやら、依頼された講演の準備やらで、時間が取れませんでした。

 で、講演について少し報告いたします。

講演は精神科医の増田さやか先生から話をいただきました。場所は愛知県岡崎市の某所。

 こじんまりとした、和気あいあいの雰囲気で、私の立場は……ほぼボランティアでした(^o^)丿

 テーマは「子どもと精神医療」です。

「子どもと精神医療」といえば、どうしても(良し悪しは別にして)「発達障害」は避けて通ることのできない問題です。

 発達障害に対する意見はさまざまあることは承知していますが、「現実的に」考えて、そのテーマを抜きに子どもと精神医療の問題を語ることは不可能でしょう。

 事実、子どもへの向精神薬の処方がかなりの割合で増加している理由の一つに、過剰診断も含めた「発達障害」の診断があります。

 それで私は「あなたの子どもを守るため――子どもの精神医療の現状について」と題して、主に発達障害について一生懸命話しました。

 しかし、1時間ほどの講演のあとの質疑応答の中でちょっと気になることがあり、とても考えさせられました。


 正直、質問された方が何を言いたいのか、よくわからなかったのですが、「「発達障害」ではなくて「愛着障害」だと思える子どもが多い」(学校関係者の方でした)といったような言葉があり、その場合どう対処すればいいのか、忙しいお母さんが愛情をかける時間がないようだが、どう対応すればいいのか(といったような内容だったと思います)。

 忙しいお母さんのことは、私にはどうすることもできませんし、シングルマザーや核家族化、女性も働かざるを得ない経済状況など、これはもう精神医療の範疇を出ていますので、そのようにお答えしました。

 ただ、その方が一番言いたかったのは、「発達障害」ではなく「愛着障害」じゃないか、ということだったようです。

 発達障害? 愛着障害? 育て方の問題? AC(機能不全家族)? それとも単に子どものわがまま? 

 子どもに何か問題(行動)が起こる場合、理由は一つではありません。その子どもを取り巻くさまざまな要因が重なった結果として、その子はそういう行動(症状)を取るようになるわけです。

 ですので、「発達障害じゃなくて愛着障害」という考え方は、発達障害はレッテル貼という批判があるようですが、だとしたら、今度は単に「愛着障害」という別のレッテルを貼っているに過ぎないことになります。

「発達障害だから〇〇だ」といういい方には違和感がありますが、発達障害概念に対する批判から発生する他の理由探しは結局別のレッテルを貼っているに過ぎなくなります。

 現場にいる方なら、子どもと真の意味で関わっていれば、発達障害だろうが愛着障害だろうが、ACだろうが、目の前にいるその子はその子以外の何者でもないはずです。

 ただ、何か理由があってそういう行動(症状)になっている。

 その問題の根本には何があるのか……それを知ろうとすること、その一助として「発達障害概念」はあると、私はとらえています。

「発達障害などない」という意見を耳にします。

「反精神医療」的立場から言わせれば、発達障害は(精神科医、あるいは製薬会社によって)作られた障害である、との主張だろうと思います。だから、そんな障害は存在しないのだと。

 その結果として、子どもの行動(症状)はほとんどが「愛着障害」が原因であるという論理が出てくるのでしょう。

 これは発達障害概念が出てくるまでの論理でした。

 つまり、養育環境の問題、親の育て方の問題、もっとはっきり書けば子どもの問題行動は「親のせい」というわけです。

 そこに発達障害概念が登場し、それまで自分を責めざるを得なかった親たちは救われました。「育て方が悪かったからではないんだ。そういう障害だったのだ」と、自己責任を回避できる回路が与えられたのです。そして、医師も親に向かって「育て方が悪かったから」というより「障害である」という説明の方がしやいので、発達障害の過剰診断が発生したという経緯はあります。

 そして、それが行き過ぎると、今度は何でもかんでも発達障害のせいにして、「愛着障害」を議論から締め出しているという揺り戻しの現象が起きました。

 また、「発達障害」について語ることは、反精神医療の旗を掲げる人たちから見れば「裏切り行為」「寝返り」に見えるのかもしれません。

 事実、私のブログにしょっちゅうコメントをいれていたある女性ですが、私が発達障害の二次障害について記事を書いた途端、「裏切られた」気持ちから、私への批判を自身のブログで展開し始めた方がいました。でも、おかしいのは、その方、しばらくすると発達障害の方を対象にしたカウンセリングを始めたようで、なんとお金までちゃんと取っているのです。たくましいというか……。

 ま、これは余談にしても、「発達障害」を語る者は精神医療に魂を売ってしまった、くらいにとらえる人がいるのは事実です。要するにゼロ百思考、「発達障害はあるか、ないか」の答え次第で、敵か味方かを判断しようとする、ある意味とても窮屈な思考です。

 一方で、そういう人間の性向をよく知っている人は、「発達障害などない」と吹聴することで、人集めをしたりします。「反精神医療的思想」を持つ人にとっては、受け入れやすい話です。

 さらに、「障害」という言葉を受け入れられない人にとっても、「そういう障害はない」という話は耳触りのいいものです。

 私もあるお母さんとメールのやり取りをしていて「あら?」という体験をしたことがあります。アスペルガーと一度は診断されていたお嬢さんについて、では親御さんとしてどう関わっていけばいいのかといった方向に話が進んだときのこと。その方はメールで、「うちの娘を障害者呼ばわりしないでください」とたいへんお怒りになりました。いや、アスペルガーと診断されたこともあると書かれていたので、それを前提に話をもっていっただけなのですが、「障害」というものに対する抵抗感は相当なものです。

 ということは、残念ですが、その方自身、(先天的な)「障害」に対してかなりの「偏見」を持っているということだろうと思います。

 そもそも「発達障害はない」という言葉は何を表しているのでしょう?

 そういう「障害」はない?

 そういう「特性」などない?

 しかし、感覚過敏だったり、ストレスに滅法弱かったり、情報処理の仕方が大多数とは少し違うという子どもが存在しているのは否定しようもない「事実」です。

 それを否定することはある意味「傲慢」です。そういう感覚過敏が辛い、という訴えさえ「ない」ことにしようというわけですから。

 発達障害ではなく、愛着障害というとらえ方をしていると、アドバイスとして「愛すればいい」「愛して愛して愛し抜けばいい」というとてもヒューマンな答えが出てきがちです。

 しかし、「愛する」って、どういうことなの?

親が与える「愛」と子どもが求める「愛」が必ずしも同じでない場合があります。

もしかしたら、その子が求めているのは「愛」ではなく、静かな「部屋」かもしれないのです。もし、そこに「発達特性」という概念がなかったら、いくら親が愛しても、子どものイライラは治まらないかもしれない。どうしてわかってくれないんだと、お互いに相手が理解不能のまま溝だけが広がっていくかもしれない。

そういう意味で、愛着障害も養育環境も発達障害もすべてをトータルに考えることが大事なのではないかと思うのです。

「発達障害などない」といって、何かが良くなるのならいいです。

 しかし、概念を否定することは、その問題の本質を探ることも否定することになります。思考停止です。

もう一度書きます。「発達障害などない」といって何かが解決するならいいですが、私にはそうは思えないのです。

 

闘う家族

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 今年の2月に知り合って、ときどき会いに行っている方がいる。

 都内在住のSさん(お母さん)と息子さん、そしてお嬢さんのKさん(32歳)だ。


18歳で精神科受診
 Kさんが精神科と関わるようになったのは18歳のとき。もともと内気な性格で、高校時代いじめにあった。

 高校卒業後は短期大学の保育科に入学したが、ある日のこと、授業中に泣きだして、何もできない状態になってしまった。

 その際、大学のスクールカウンセラーから「こういう病気は早ければ早いほどよいから」と地元のクリニックを紹介されて、それが精神科受診のきっかけとなった。

 眠れない。そして、幻聴もあった。「みんなが自分の悪口を言っている」といった被害的なもの。また、恐怖感も強く、部屋をタオルで幕を作って囲ったりした。

 そのとき処方された薬は、ジプレキサ、アキネトン、リスパダール(確か5㎎)。

 朝昼夕と日に3回飲んだが、症状は改善しているのかどうか……。ともかく、寝てばかりいるようになった。医師からは「眠れば眠るほどよくなる」と言われた。

 一進一退を続け、その後病院、クリニックを変えるごとに薬が変更、増量され、そのたびに状態は少しずつ、確実に悪くなっていった。

 都内にあるクリニックで森林浴などに参加しつつ通院をしたこともあった。

その主治医にKさんが「うつ気味」と言ったところ、サインバルタとエビリファイが処方され、それらを飲み始めた途端、おとなしい性格だったKさんが、突然攻撃的、乱暴な言葉遣いをするようになった。

「この二つの薬をきっかけに、どんどん体調が崩れていきました」とお母さんのSさんは言う。




入院で薬が増える

 結局、入院せざるを得ない状況となり、都内の〇〇野病院に入院したが、ご多分に漏れず、入院によって薬がまた増やされ、最終的には以下のような処方となった。



 平成13年5月

・フルニトラゼパム「アメル」2㎎ ×1

グッドミン0.25㎎ ×1

・アキネトン1㎎ ×1

・ベンザリン10㎎ ×1

・デパケンR200㎎ ×1

・ウィンタミン25㎎ ×3

・リスパダール1㎎ ×2

・リスパダール内服液 1ml ×1

―――――――――――――

就寝前

・リスパダール2㎎ ×2

・リスパダール1㎎ ×1



 1日14錠で、うち抗精神病薬はウィンタミン、リスパダール。

 そして、リスパダール内服液を飲むようになってから、Kさんの生理が止まり、状態はますます悪化した。



減断薬決意
「生理が止まって、おかしいと感じ、これがきっかけで減薬を決意しました」とSさん。
 たまたまその頃知り合った自然食品店の店主や他の方から減断薬をしてくれる医師のことを教えてもらった。Sさんは、これまで薬の変更、増量のたびに症状が悪化していたため、すぐに減薬に踏み切ったという。

 2013年12月。上記薬の減薬を開始した。この時点でKさんは向精神薬を12年間飲んだことになる。そして、6ヶ月かけて減薬・断薬をした。

この間の離脱症状は、

・しゃべれない

2階の窓からの飛び降り

・食事を食べない(体重の減少)



2014年6月に断薬が終了。

私がSさんに初めてお会いした今年2月頃(断薬8カ月)の離脱症状は、

・物を投げる。

・大きな声叫ぶ。悲鳴、暴言。

・母親をぶつ。暴力。

・人が変わったようになる



「娘からいっときも目が離せなくなりました。今の症状は薬の影響だから離脱が進めば時間とともに改善していく、と心では思っているのですが、「今日も何とか生き抜いた」と息子と二人、疲れ果てている状態です」

 Sさんはメールにそう書いてきた。

1回目
 このメールをいただいて数日後、私はご自宅にうかがってKさんに会った。前日、スピーカーを投げようとして、自分の顔に落としてしまい、目の周囲に赤いアザを作り痛々しかったが、とくに初対面の私を拒否する様子はなかった。

 じつは、Sさんは自営業を営まれ、広い店の半分をKさんのために取り潰し、そこにこたつを作って生活の場としている。少しでもKさんに外の雰囲気を感じてほしいと、シャッターを20センチほど上げてある。シャッターは一応閉めておかないとKさんが外に出ていってしまうからだが、通りに面した家なので、シャッターの隙間から外の日差し、そして街行く人たちの足が見えることもある。

 Kさんは普段は2階の自室にいるが、そこは外から鍵がかけられている。だから、この1階のこたつの部屋が一家団欒の場なのだ。(2階の部屋はボロボロ。家具もほとんど移動して、部屋には物を置かないようにしている)。

 じつはKさんの父親は、娘のことを心配しつつ、昨年の12月亡くなってしまった。これまで3人でKさんを支えてきたが、今はお兄さんとSさんの二人で世話をしている。Sさんには店のこともあるし、Kさんが不穏になったとき、女のSさんだけでは抑えられるか不安が残るからだ。

 そして、親戚の人たちはKさんを見るたびに「かわいそうだ」「病院につれていけ」「薬を飲めばよくなる」という意見。Sさんは、

「そういう意見を聞くたびに、このままでいいのだろうか。自分は間違っているのだろうかと不安になります」

 しかし、せっかくやめた薬。もうしばらく様子を見てもいいのではないですか、と私が言うと、Sさんは「そうですよね」と安堵した様子だった。

 Kさんはとくに私のことを意識はしていないようだった。普段は控えているという甘い物をパクパクと食べ、お茶を飲み、ときどき2階の自分の部屋に行き、私のために見せたい本を持ってきてくれたりもした。

 しかし、コミュニケーションは成立しない。言葉が出てこない。目の焦点が合いにくい。

 それでも私は4時間ほどもお邪魔していただろうか。





2回目

 2度目に会ったのは、その3か月後の今年5月である。

 その直前、Sさんから頂いたメールには以下のようにあった。



「毎日、断薬との闘い、疲れと不安と希望が入り混じりながら、日々を過ごしております。

娘の近況としまして、一進一退を繰り返しております。

具体的には、

・突然、物(本や枕)を放り投げる。

・突然、大声で泣き叫ぶ。

・自分の思い通りにならないと、小さな子供のように暴れる。

・悪口を言う。(これは少なくなりました)



改善してきた所は、

・おとなしい時間が増えてきた。

・来客者が来ると(親族等)名前を言って、ニコニコ笑う。

・二階から降りてきて、一階に居る時間が増えてきた。

・暴力性や攻撃性が減った。



家族が心配していること

・突然、大声を出すので散歩に行けない。

・日常の口数が極端に少ない。

・表情が乏しい。

・会話ができない。

・未だに料理や洗濯ができる気配すらない。

 本当に、元に戻る(できるようになる)のか心配。」



 ご自宅にお邪魔すると、以前目の周囲にあったアザはきれいに治っていて、Kさんは元気そうに見えた。しかし、Sさんのメールにもあったように表情が乏しい。

Sさんにうかがうと、つい最近、近くのクリニックから訪問してくれる精神科医とつながり、Kさんを診てもらっているという。医師の診たては「統合失調症」で、Sさんが薬をやめたことを告げると、「だから再発した」といったような(はっきり言葉にはしなかったらしいが)雰囲気だった。薬を飲めばよくなるかもといった感じだが、Sさん家族の考えを尊重して、服薬を強要することはなかった。

 この日は近くの公園まで、4人で散歩をした。歩くのがすごく早い。近所の人たちもKさんのことは知っていて、数人から声をかけられる。長年地元で商売をしているので、みな顔なじみなのだ。

 途中いくつかある自動販売機の前に行き、Kさんは、これが飲みたいあれが飲みたいと要求し、それが受け入れられないと大声を出したり手が付けられなくなるとのことだったが、この日はそういうこともなく、散歩を終えることができた。

「かこさんがいるから」とSさんは言うが、おそらく私がいることで安心感を得ている母親のSさんの気持ちがKさんに敏感に伝わっているのだろう。

 この日もKさんは甘い物をパクパクと食べ、おせんべいも食べ、お茶を飲んだ。そして、ある一瞬、「こっちの世界に戻ってきた」と感じる目になった。

 この3ヶ月で少しずつよくなっている。確実に……と私は思った。




3回目

 そして、つい先日、5ヶ月ぶりに、私は三度ご自宅を訪問した。Kさん、断薬して1年4ヶ月である。

 お兄さんに抱えられて、いつものこたつの部屋にやってきたKさんを見た瞬間、私には以前よりずいぶんよくなっているように感じられた。目つきがいいと思ったのだ。

 ただ、私のことは覚えていないのか、あるいは覚えていても、それをどう表現していいのかわからないのか、反応はなかった。

 そして、相向かいの席に座ると、かなり強い目つきで、私の顔をじーと見つめる。こちらが恥ずかしくなってしまうくらい。これは前にはなかった行動だ。

 また始終唾を吐き出している。この唾吐きは数か月前に会った、断薬1年ちょっとくらいの女の子がやっていたのと同じ行為だ。ある説によれば、体内に蓄積されていた薬が溶け出して、唾にも混じって出てきているため、その匂い(味?)が不快なため唾を始終吐き出しているのではないか? とのこと。

 ということは、これは改善のしるしと思っていいのか。

 ともかく、唾吐きについては、同様の人がいた事実を伝えただけで、Sさん、息子さんは安堵していた。いったいどうしたのか。なぜこんなことをするのか。悪化したのか。情報のない中で家族はさまざま不安になるものだ。

 また、Sさんによると、言葉が少しずつ出るようになってきたという。特に起きたばかりの時間帯は、いろいろしゃべるようになった。先日は「お母さん、大好き」と言いながら抱きついてきたとも言っていた。

 ただ、家族は四六時中見ているので、その変化(改善)に気づきにくい。「以前伺ったときには、そういう話はなかったですよ」と言う私の言葉で、改めてKさんが少しずつ話し始めていることに気づくのだ。

 そして、Kさんはよく笑うようになった。爆笑といってもいい笑い方だが、泣いたり怒ったりするよりはいい。

 視線は前にも書いたように、じーっと私を見つめる強い視線。それまで視線を合わせることはなかったと記憶しているので、これはものすごい変化である。また、私が好きな食べ物はと訊ねると、答えることはできないが、「ジャガイモが好きなの?」と聞くと、うんと頷く。そして、また私をじーっと見つめるのだ。

 そうした目の動きを見ていると、「脳の誤作動」であることがよくわかる。薬の影響で、脳がきちんと作動できなくなり、どうすればいいのかをいろいろ探っているような感じなのだ。

 そして、ときどき疲れたように、ぼんやりと一点を見つめている。そのときお兄さんがKさんの肩を叩いたら、

「あ、びっくりした」

 と、明瞭な声で言った。

 お風呂は日に10回も入っているらしい。以前は家族が入れていたが、今は1人で入り、1人で着替えることができる。そして、音楽が好きで、ときどき音楽に合わせて床をどんどん踏み鳴らして踊ることもある。

「薬を飲んでいるときは、料理もできました。一緒にコンサートに行ったこともあります。伯母と高尾山にも登りました。薬を減らし始めてから、どんどん悪くなっていった。本当にこのままでいいのか、いつも不安の中にいます。ここに来てくれる先生も、薬のことをちらと口にされます。もし飲んで、Kがまたしゃべれるようになるのなら、飲ませたほうがいいのか……」

 Sさんが言うと、隣で息子さんが

「いや、薬はダメだよ。このままいこうよ」と言う。

 ただ、Sさんの中には、息子さんに対する辛い思いもある。Kさんの面倒をともに見て、母親とすれば息子の人生を無駄にしてしまっているという思いは消せない。せめて、薬を飲んで少しでも世話が楽になれば、息子を解放できる、Kさんへの思いと同時にその思いもSさんからは片時も消えないのだ。

 そして、家族だけで介護をする辛さ……。

「せめて1日2日だけでも、こういう子を預かってくれるところがあれば……」

 365日、1日の休みもない現実。

 精神障害者を預けられる施設はある。しかし、断薬してこのような状態になった場合、当事者家族は行き場を失う。

 見通しのつかないことも家族を追い詰めている。あと何年? どこまで回復すのか? 本当にこのままでいいのか? 

 減断薬の施設を必要としている人は本当にたくさんいる。

 そういう家族が考えることは、自分で施設を作るということ。私は何人もの人からそういう希望を聞いたことがある。もちろんSさんも息子さんも、この店を改築して……という思いを持っている。

 いま、減断薬が一つのブームのようになり、精神医療に反対する団体も出てきた。しかし、こういう活動にはなかなかつながらない。

 医療によってこのような状態になった「医原病」であることは間違いがない。にもかかわらず、誰も責任を問われないというこの現実。大学病院にしろ、国立の研究センターにしろ、減断薬を言うのなら、せめてそうした施設も提供すべきではないだろうか。

 私は、Kさんの回復を祈って、これからもSさん家族を見守っていこうと思う。







告知

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 お知らせ



ゆうさんの会 (11月13日)

 これまでゆうさんの会は第一金曜日開催でしたが、11月はゆうさんのご都合で、第二金曜日となります。ご注意ください。

日時 1113日金曜日 1115

場所 JR小岩駅付近の公共施設

出入り自由、ドタキャンOKです。

各自持参して、お昼を食べながらお話しましょう。

申込:U(ゆう)さん pieta2kids@gmail.com

 もう一つ、神戸の散歩会。以前お知らせしたのがかなり前になりますので、もう一度告知します。


20151115日(日) 秋の散策と茶話会@神戸.第3

紅葉がきれいです。散策と園内レストハウスにて茶話会を。

集合:午後1時 離宮公園正面前

場所:神戸市立須磨離宮公園 http://www.kobe-park.or.jp/rikyu/

参加費:入園料400円プラスお茶代

主催:医療を考える会・神戸

申込:槙野さん port1083port1083@gmail.com


ベンゾジアゼピン系薬物に関する要望書(薬害オンブズパースン会議)

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 薬害オンブズパースン会議が、ベンゾジアゼピンの処方に関して、国や製薬会社等に対して要望書を提出しました。(10月28日)

 これに関しては、今年2月に当会議が開いた勉強会に私も参加して、弁護士さんから「要望書」の内容に関して意見を求められましたので、私なりの考えを述べたりしました。

 要望の主な柱は、以下の通りです。




(1) 以下を内容とする添付文書の改訂

  ①常用量依存症と離脱症状、多剤併用の危険性を警告欄に明記すること

  ②ジアゼパムの力価との等価換算値を記載すること

  ③処方期間の継続に制限を設けること

(2) 自己決定権保障に資する患者向け説明文書の作成・配布・ネット上での公開

(3) ベンゾジアゼピン系薬物の依存症が薬剤情報提供文書に必ず記載されるための施策

(4) ベンゾジアゼピン系薬物依存症に特化した専門医療機関の設置拡充

(5) ベンゾジアゼピン系薬物依存症に関する全ての医療関係者を対象とした研修の実施

(6) ベンゾジアゼピン系薬物依存症に関する医学部及び薬学部における教育の強化

http://www.yakugai.gr.jp/topics/topic.php?id=902





 要望書の詳細については、

http://www.yakugai.gr.jp/topics/file/bennzojiazepinkeiyakubutunikansuruyoubousyo.pdf

 

 この中で、医療関係者の認識の低さを指摘している点は評価したいと思います。

 また、、「専門医療機関整備の必要性」として、以下のように述べている点は注目に値するのではないでしょうか。

「ベンゾジアゼピン系薬物を大量かつ長期連用されており、その離脱症状に苦しんでいる患者が多数存在するにもかかわらず、日本においてその離脱を専門とする医療機関は、当会議の知る限りにおいて存在しない。

 また、平成26年度「依存症治療拠点機関設置運営事業」において指定された全国拠点機関である久里浜医療センターには、アルコール依存、ネット依存、ギャンブル依存に関する特設部門は存在するものの、ベンゾジアゼピン系薬物を含む向精神薬依存に関する特設部門は存在しない。

 そこで、全国拠点病院及び依存症治療拠点機関の中に、ベンゾジアゼピン系薬物を含む向精神薬依存症に関する特設部門を設置するとともに、少なくとも各都道府県に1つは依存症医療拠点機関を指定することによって、ベンゾジアゼピン系薬物離脱症状に苦しむ多数の患者が、専門的かつ効果的な治療を受けることができる治療体制を整備する必要がある。」




 遅きに失した感は否めないですが、少なくともここに書かれているすべてが実現されることを願うしかありません。

 それにしても、ベンゾに関する医療関係者の認識の甘さは、どこから来るのでしょう。精神科に限らず、内科等でも、本当に気軽にベンゾが処方されています。ちょっとした一言……寝付けない、胸がドキドキする、不安……だけで、患者に何の説明もなく、「いつもの薬」にもう1錠加わっていたりします。

 パニック障害で抗不安薬を処方されて、気が付いたら20年。それを減断薬することがどれほどの苦痛を伴うものか、医師は知らないのでしょうか。おそらく知っているからこそ、出し続けるしかない(という選択をしてしまう)のでしょう。しかし、「一生飲んでも大丈夫」などというセリフが出てくるのは、「常用量依存」という実態を知らないからだと思われます。

 ともかく、医療関係者はベンゾの知識をもっと身に着けるべきです。処方権という大きな権力を持っている医師であるなら、当然のことです。

その当然のことがこれまで「放置」されていたこと自体、考えてみたら日本は「医療者天国」なのだと思います。

ブログを始めた5~6年前はまだまだベンゾに関して医療者の認識は今以上に低く(皆無?)、患者さん自身、「離脱症状」も知らないまま、医療に振り回されている状況がありました。

それに比べると、多少の前進はあったのだろうと思いますが、この要望書がどこまで反映されるのか、見守っていきたいと思います。

また、こうした動きが出てくると今度は逆に、これまで処方していたベンゾをぱったり出さなくなってしまう医師も出てきたりします。そうなると患者は一気断薬となり、たいへん危険です。要望書を作る段階で、私からはこうしたことへの危惧を述べたのですが、それに関しては、少々別の形で、要望書の最後にこう書かれています。





現在ベンゾジアゼピン系薬物を服用している患者又は家族の方へ

減薬又は断薬については、主治医と十分に相談しながら、慎重に判断する必要があります。その際、本書本文で紹介した日本語版アシュトンマニュアルも参考になります。患者が自己の判断で減薬又は断薬の判断をすることは、逆に危険ですのでくれぐれもお控えください。



しかし、相談できる主治医がどれほどいるのか? そもそも要望書の中で、医療者のベンゾに関する認識の低さを指摘しているのです。だからこうした要望書が必要になったわけですが、こういう堂々巡りにならざるを得ないこと自体、いまの精神医療の実態をよく表しているのかもしれません。














精神医学は「空中楼閣」、論文信用度37%の世界

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 京都新聞11月1日の記事に、たいへん興味深いものがあった。

 まずは、全文を紹介します。



有名論文、うのみは危険? 精神医学、治療効果の信用度37%

京都新聞 111()920分配信



 著名雑誌に掲載され引用の頻度も高く信頼性が高そうな論文であっても、精神医学の分野では、その論文が推奨する薬剤などの治療効果の信用度は約37%にとどまる、とする調査結果を、京都大医学研究科の大学院生で精神科医師の田近亜蘭さんがまとめた。現場の医師に論文の結果をうのみにしないよう警鐘を鳴らす内容で、英精神医学誌でこのほど発表した。

 医学分野の論文は高頻度に引用されていても信頼性は必ずしも高くないとする海外の調査結果がある。特に精神医学分野では、死亡や心筋梗塞の発症といった客観的な評価指標を用いることが難しく、論文の信頼性に疑問ももたれていた。

 田近さんは、2000~02年に「ニューイングランドジャーナル」や「ランセット」など医学・精神医学の分野で著名な雑誌8誌に掲載され、出版後3年間で30回以上引用された論文計約2600本から、精神科の治療法を内容とし、後に同じテーマでより緻密な研究デザインの新規論文がある43本を元論文として抽出。元論文を新規論文の内容と比較したところ、新規論文と同程度以上に治療法の効果が確認できたのは16本のみで、別の16本では効果が否定された。元論文の方が、効果を過大に評価する傾向が見られた

 例えば、元論文の一本では、患者20人に対する臨床試験の結果から統合失調症の治療薬である「オランザピン」が難治性うつ病に「大きな効果がある」としていたが、患者数288人の大規模の臨床試験を基にした新規論文では「効果なし」となっていた。

 田近さんは「研究者や現場の医師は、有名論文であっても、惑わされずに批判的にチェックする必要がある。特に小規模の臨床試験で大きな効果を報告している論文には注意が必要だ」と話している。

(引用以上)





 信用度37%とは、「科学的」とはとても言えない状況である。が、薬害に遭われた方なら、精神医学などどうせこんな程度だろうと感じていた方も多いだろう。

 それにしても37%とは、精神医学の論文の63%は信ずるに値しないものであるということだ。



 薬剤の治療効果とは別の話だが、以前、いろいろ情報を集めていた「精神疾患への早期介入」にどれほどの効果があるのかという問題――例えば、オーストラリアのマクゴーリ―などが発表している研究論文では、かなりの確率で「早期介入は精神疾患の本格発症を予防する」といった結論が導きだされているが、そうした「早期介入」を支持する18の試験について、コクランライブリーのメタ・アナリシスでデータをまとめたものが発表されている(詳細については拙著『ルポ精神医療につながれる子どもたち』183ページを参照してください)。

 コクランライブリーとは英国の組織で、世界中で発表される論文を精査したり、治療法について評価をしたりする国際プロジェクトのことである。製薬会社の資金援助を一切受けていないという点で独立性、中立性が保たれているといわれている。

 そのコクランライブラリーの「早期介入試験における研究」の分析結果は以下のようなものだった。


「研究はさまざまあるが、そのほとんどは先駆的研究者によって行われた小規模なものであり、多くの方法論的制限があった。概ねメタ分析は不適当なものであった(後略)」



 にもかかわらず、日本の学者を中心に推進されている子どもへの精神科早期介入は、コクランライブラリーで「否定された」論文を根拠にその正当性、有効性を訴えているのだ。




 上記、京都大医学研究科の田近亜蘭さんが対象とした「オランザピン」(商品名ジプレキサ)が難治性うつ病に効果があるかないかを調べた研究。元論文の一つは20人という小規模なもので、「大きな効果がある」と結論付けていたが、患者数288人の大規模の臨床試験を基にした新規論文では「効果なし」である。

 試験の背景に製薬会社が絡んでいたり、製薬会社の影響を受けている学者が研究を行っていたり、チェック体制のまったくとれていない状況での研究だったり……理由はいろいろ考えられるが、それでも研究で「大きな効果がある」とされ、それがそのまま通ってしまえば、オランザピンが難治性うつ病に処方されるようになるのである。大規模試験では「効果なし」の薬が、この論文を信じた医師によって大手を振って処方されているかもしれないと思うと、空恐ろしい。



 前述の「早期介入」についても、まず「未治療期間は短い方がいい」とする論文があり、それを根拠に「早期介入」の意義を訴え、さらに子どもの中の何%は精神病につながる症状を体験しているとして、オーストラリアのマクゴーリーの「実験」を出汁に、日本でも子どもへの早期介入がいかに重要かを唱えている(さすがに最近ではマクゴーリーの研究はあからさまだったため、日本の精神科医たちも触れることはなくなったが、それでも彼の名前こそ出さないが、オーストラリアなどで行われた研究を鵜呑みにして、早期介入を口にする学者は多い。それをHPで訴えて、患者をリクルートしている例もある)。

 こうしてみてくると、精神医学の世界というのは、「信用に値しない」論文を根拠に、その上にさらに「信用に値しない」研究を積み上げて、延々それを繰り返し続けてきた……。まさに「空中楼閣」の世界といえる。

そして学者たちは自分たちの都合のいいように、おいしいところだけ「つまみ食い」をし続けている。

「エビデンス」という言葉を金科玉条のように口にする精神科医(に限らず精神医療に関わる人)を、私はかえって信用しない。そういうことをいう人は「信用度37%」の論文にエビデンスを求めてしまいがちなのだ。

まずは何もかも疑ってかかるという、人間としてはいささか偏屈に見えるスタンスで眺めない限り、この精神医学の世界においては「本物」は見えてこないだろう。いや、「本物」といったところで、「本物」などどこまでいってもないのかもしれないが。

ともかく、精神医学の「嘘」がこうして現場の精神科医自身によって暴かれるのは歓迎すべきことである。だが、こんなことに気づいてしまうと、田近センセイ、精神科医などやってられなくなるのではないかと心配でもある。




ちなみに、電気ショックについても、海外の研究だが、2010年その効果について多くの文献を調査したものが「ECT文献レビュー」として、発表されている。

電気ショックについては、文献では比較的「効果あり」とするものが多いのだが、このレビューでは、ECTの効果は「ごくわずか」であるという。そして、その効果の中には精神科医のみが効果を認めているものもあり、また、自殺を予防するという仮説を支持する研究は存在しないと結論付けているのだ。


電気ショックの論文をいくつか読み、その効果を真に受けたある人から、行き詰った状況を打開する策として「電気ショック」を勧められた人がいる。薬よりましだからか? 論文にエビデンスを認めたからか? 精神科医のみが効果を認めている電気ショックを、である。

本物の「エビデンス」はどこにあるのか……。

私には、それは論文の中ではなく、当事者・体験者の話の中にあるような気がしてならない。






















茶話会報告

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 10月31日、多摩茶話会、11月8日、横浜茶話会と行いました。

 今後も関東圏での茶話会があり、日にちが詰まっているせいか、ごく少人数の「茶話会」になりました。

 しかし、人数が少ないため、じっくりお話を聞くことができて(ご家族のこと、成育歴にまで話がおよび)、たいへん有意義だったと思います。

 大人数では一人一人の話がどうしても一方的になりがちですが、小規模だとさまざまな方向からの話し合いになります。

また上意下達のような方式を取らないのは、私の中に、主役はそれぞれ参加した方(当事者)たちであるという思いが強いからです。精神医療の現場で、当事者はある意味置き去りにされ、医療ヒエラルキーの最下部に追いやられていたわけですから、こうした会においてもそれと同様の構造では意味がありません。ブログの姿勢がそのまま茶話会の姿勢でもあります。


しかし、告知板ができたため、ブログの存在を知らないまま、告知板だけを見て参加される方もいます。

また、そのためなのかどうかわかりませんが、茶話会に参加されるということは、減断薬を念頭にされていると思うのですが、一人で漠然と「薬を減らしたい」と考えていることと、実際に薬を減らしていくことの違いについて、体験者の話を聞いて、愕然とされる方もいるようです。

今回横浜では、ご家族の参加も複数ありました。

 減断薬を終えて、いまその後の症状に家族で取り組まれている人、いったんは薬が減ったものの、減薬のブレから少し薬が戻ってしまい、今後どうしていこうかと模索中のご家族、きょうだいが長年の入院生活からいまアパート生活をはじめ、自立の道を探られている方……。

 また当事者の方の参加では、やはりベンゾの減断薬が大きなテーマとなっています。今回は、すでに減断薬を終え、その後の離脱症状の乗り越え方のヒントがたくさん話されました。

 そして、親子の問題。

 これは、当事者からの話でしたが、ご家族として参加されている親御さんたちにとっても参考になる話かもしれないと感じました。

 立場は違えど、それぞれ抱えているご苦労、辛さを共有することができたと思います。

傷ついた動物は舐めて傷を癒します。そういう過程が人間にも必要です。「傷の舐めあい」おおいに結構。

また、それにとどまらず、いくつかの計画も進行中です。決まりましたら、またブログにてお知らせします。


残念ながら茶話会は関東圏にとどまっていますが、東北地方や関西でも少しの動きがあります。こちらもまたはっきり決まりましたら、お知らせいたします。

今後の茶話会等について、改めてお知らせします。


20151113日(金) 東京・小岩「ゆうの会(親の自助会)」第10

子どもを精神科医療に繋げて良いのか、迷っておられるお母さん対象での茶話会です。


結論は出ないのかも知れませんが、一緒に考えたいと思います。

11月は都合により第二金曜日にさせて頂きました。ご予定されていた方には申し訳ありませんが、よろしくお願いします。


時刻:午前11時~午後3


会場:JR小岩駅付近の公共施設(直接お知らせします)

 参加費:300
 定期開催:毎月第一金曜日の予定
 申込:U(ゆう)さん pieta2kids@gmail.com



20151115日(日) 秋の散策と茶話会@神戸.第3


紅葉がきれいです。散策と園内レストハウスにて茶話会を。


集合:午後1時 離宮公園正面前


場所:神戸市立須磨離宮公園 http://www.kobe-park.or.jp/rikyu/


参加費:入園料400円プラスお茶代
 主催:医療を考える会・神戸
 申込:槙野さん port1083port1083@gmail.com


20151115日(日) 東京「紅葉の井の頭公園と動物園」散策.第4回


きれいな紅葉の井の頭公園と動物園の散歩はいかがでしょう。


日時:1115日(日)午後

費用:井の頭自然文化園・入園料、一般400円、障害者手帳の呈示で本人と付添1名が無料。井の頭池のボートや遊具は自己負担。


最寄駅:吉祥寺駅(JR中央線、京王井の頭線)

申込:お名前(HN可)と、「散策参加」と明記して申込をお願いします。受付は週に一度まとめて連絡いたします。
  sawakai02@gmail.com


20151122日(日) 東京茶話会「医療を考える会」第10


時刻:午後1時~5


会場:巣鴨近く、東京都豊島区(直接お知らせします)


参加費:500

申込:お名前(HN可)と、志望動機(今までの経過)を簡単に書いて、 申込をお願いします。受付は週に一度まとめて連絡いたします。

sawakai01@gmail.com


2015126日(日) 埼玉茶話会「医療を考える会」第4


時刻:午後1時~5


会場:埼玉県さいたま市(直接お知らせします)


最寄駅:大宮駅(JR、東武野田線、ニューシャトル)

参加費:500


申込:お名前(HN可)と、志望動機(今までの経過)を簡単に書いて、

申込をお願いします。受付は週に一度まとめて連絡いたします。

  sawakai03@gmail.com


東京・自助グループ「MDAA東京」 : 毎月第一、三土曜日 午後5時~

 http://www.just.or.jp/?group=005097










幻聴あっても精神医療に関わらないまま4年経過

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 2011年8月の記事に、次のようなものを書きました。

 http://ameblo.jp/momo-kako/entry-10982632374.html


 冒頭部分を引用します。

「Mさんの20歳になったばかりの息子さんは昨年(2010年)の11月頃、統合失調症とも思える症状を呈するようになりました。どうしていいか迷った末、精神科へ連れていったものの、息子さんは看板の「精神科」という文字を見て、受診を拒否。仕方ないので、そのまま連れ帰ったと言います。

Mさんはご自身もアメブロをやっている関係から私のブログも読んでいただいていたとかで、精神薬の怖さや誤診についての知識を持っていたため、無理強いはしませんでした。

しかし、状態がどんどん悪くなっていく息子さん――」



ということで、まずはブログの記事を読んでいただきたいのですが、結局息子さんは医療に関わることなく少しずつ改善し、その後、母親のMさんを通して笠陽一郎医師のセカンドオピニオンを受け、統合失調症ではなく、広汎性発達障害の可能性を指摘されました。

そうした様子を、私は2013年7月に「がんの放置療法」になぞらえて、Mさんの息子さんの例を以下のように紹介しました。

http://s.ameblo.jp/momo-kako/entry-11577974069.html



「(息子さんは)まず昼夜逆転の生活。被害妄想的になり、監視されているなど言い出す。幻聴もあったようで、目つき顔つきもどこかおかしい。遁走もあった。

しかし、母親(Mさん)が精神科に連れて行こうとしたところ、息子さんは「精神科」という文字を見た途端、逃げ出して、そのまま受診せず、まさに「放置」状態となった。

仕方なく、しばらく様子を見ることにした。

すると、症状は悪くなるどころか、むしろ薄皮をはがすように、少しずつ少しずつだが、改善され(まず眠るようになったという)、半年もたつ頃には以前の状態に戻ったということだ。

もし、最初の状態で医師にかかっていれば、薬による治療が始まっていたのは確実である。」


この記事をたまたま読んだMさんから、つい先日、連絡をいただいたのです。

2011年以来の息子さんの「その後」が書いてありました。紹介させていただきます。



「久しぶりにかこさんのブログに入ってみました。気になるタイトル(『精神疾患の放置療法』)だったので、見てみたらうちの事でした。


あれからのことを書きます。今、九州にいます。

単身赴任が長い夫のもとへ、息子を連れて来て2年たちました。

予備校時代、統合失調症のように錯乱したあと、薄皮を剥がすように回復してきた頃、もうすでに22才になっていました。

私と2人よりも、夫がいてくれる方がもっとよくなるかもと思ったからです。

一回も病院には行かずじまいです。

もう一生引きこもりでも仕方ないと腹を決め、自分のことはやれるようにならないと、親がいなくなった後の事を思い、料理や家事を仕込んでいました。


九州に来て、小さな賃貸で3人暮らしが始まりました。

その後、私が盲腸で入院。さらにガンの疑いで手術することになりました。

ガンだと聞いて、正直、ラッキーだと思いました。

知人の息子さんでお母さんがガンになったら長い引きこもりから抜け出した方がいたからです。

手術後の病理検査でガンではなかったのですが、そのころから息子は、ますます良くなり自分で夜勤の仕事をみつけて働き始めました。


とても生き生きしていて、完全に治ったと思い、一年たったら失業保険をもらいながら勉強をと望んでいました。

私の考えたストーリー……。


かし、仕事始めて10ヶ月くらいたった時に、また幻聴が現れたようです。


長時間、夜間に働いた疲労なのか?


上司はいいけど、同僚が原因だったと後で聞きました。やはり対人関係からまた発症したようです。

あと半月で一年というときに退職。結局、失業保険はもらえず仕舞い。


がっかりしましたが、本人が苦しい苦しいというので、仕方ない。

どういう風に苦しいのかと訊くと、声が聞こえるそうです。ひどい事を言って、責めたりだと思います。

自分は精神病だと言います。統合失調症だと。


でも、病院に行っても治らない、というこだわりがあります。



それでも息子は、苦しいと言いながらも、市役所の手続きなど公的な場所には一人ででかけて行きます。欲しいものは買いに出かけます


あまり苦しがるので本屋で漢方薬を調べ、「柴胡加竜骨牡蛎湯」を飲ませてみました。この5月くらいからでしょうか。

漢方薬屋さんは効く薬は本人が飲んだらすぐわかるという事でした。彼にはあっているようで、苦しい苦しいというときに飲ませていると好感触です。


勝手に飲むのをやめるとまた悪くなるようなので、今は半強制的ですが、かなり調子はいいようです。


笠先生が教えてくださったウコンもたまに飲んでいるようですが、いいと言っています。ただ、抑肝散は彼には合わなかっ
たようです。もっと息子に効く漢方薬があるのではと考えています。



現在24歳。

実は2週間くらい前に一人暮らしを始めました。一人は気楽でいいそうです。それまでいくら口うるさく言っても出来なかったことができるようになっていたり、日々成長している事を実感できます。

感謝する気持ちも生まれているようです。


苦しさは時々出てくるけれど、前に比べたら全然よくなったそうです。


家賃と光熱費は親が払っていますが、年金や税金や携帯代、健康保険の支払いはいまはすべて息子になっています。働いて貯めたお金を使っています。以前は親が払っていましたが、いつまでも親はいないから、少しずつ自分のことは自分でできるようにと。

それでも、特性的に頑固なので、支払いの移行には時間をかけて、彼が納得するいいタイミングを見つけながらのことでした。貯金がなくなったら、また仕事も考えると言っています。


私が朝、犬を預けに行き夕方引き取りに行くので、様子はチェックできます。

ご飯も自分で買い物に行き、自炊しているので、このまま良い方向にいけばいいなと思っています。

最近はかなり反抗期です。

「発達障害も発達する」と福岡の引きこもりの会の講演で知ったけど、息子も発達しているのか、私の料理の差し入れをこのごろは拒否します。



最近私が考えるのは、うちの息子は笠先生の見立てどおり広汎性高機能発達障害だと思われるが、昔から言われる精神分裂症、統合失調症と(症状としては)同じものなんじゃないかと思ったりします。

 統合失調症なら、放っておけば廃人狂人。そして、少しでも早く薬物治療をというけれど……どうなんだろう?

薬でかえってひどくなっている人がいる。

うちは、引きこもりはよくなっていないけど、病院にいかなくても、廃人にはなってない。

人それぞれ生育環境が違うし、うちも引越しばかりだったし、私もいろいろと反省すべき点も多いので、今息子がこうなった事に対しては責任があるなとか日々考えつつです。」



こんなメールを送ってくれたMさんに返事を書くと、Mさんから、お礼の言葉とともに、「放置療法」に対する疑問を投げかけられました。


「放置療法という概念がよくわかっていません。


 我が家の場合はただの放置ではない。いろんな情報を調べ、試行錯誤しながらやってきています。」


 確かにその通りです。医療的には「放置」ですが、「発達障害」に関しては「放置」ではなかった。

 当事者の特性を見極めながらの対応は必要ですし、サポートやアプローチの工夫(つまり、発達障害に関する情報収集)も大切です。


Mさんの息子さんのように、「引きこもりはよくなっていないけど、病院にいかなくても、廃人にはなってない」――これは大きな真実かもしれません。

精神科医がMさんの息子さんのようなケースを目の当たりにすれば、きっと「広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)だから、投薬なしでもやれたんだ」と言うでしょうが、それは後出しジャンケンのようなもので、もし、幻聴が出た時点で受診をすれば、多くの場合統合失調症という診断になり、投薬治療が始まったに違いないのです。

統合失調症「のような」症状が出て、そこで精神科を受診して、広汎性発達障害と診断をされて、抗精神病薬の投薬を受けず、特性に合わせたアドバイス、親への対応の工夫などが医師からなされるとしたら、精神医療の存在意義も多少は上がると思いますが、そういう方向にもっていける医師がどれくらいいるか……(?)。



Mさんの息子さんのケースは、医療が介在しなかった場合の成り行きとして、たいへん貴重な体験談と思います。

子どもに「幻聴」等が出たとき、親は慌てます。ネット等で調べても、ほとんどが「早く専門医の診断を」といったものばかりです。「手遅れ」という言葉に恐怖心を煽られ、「放置しておくと取り返しのつかないことになる=廃人」と言われれば、もう「専門医」を受診しないという選択はほぼなくなるでしょう。

慌てて受診して、医師の言葉を鵜呑みにして、投薬も仕方なし(そのうち薬漬けも仕方なし)といった心理に陥っていく……。

「手遅れ」というのは、実に巧妙な言葉です。オーストラリアのマクゴーリ―が早期介入を叫んだ時も「手遅れになる前に」がキャッチフレーズでした。

 しかし、慌てて受診した先の医療の質を考えると、「そんな言葉に惑わされないで」と言いたくなります。Mさんはあくまでも「うちの場合」というとらえ方をされていますが、もしお子さんに幻聴等が現れても、それほど慌てる必要はない(慌てて受診する必要はない)と、これまで多くの事例を見てきて思います。

 しばらく様子を見る……。子どもの内部の出来事という限定的なとらえ方をするのではなく、何か外に「原因」があるかもしれないという視点も大切です(学校等での出来事)。あるいは、家族関係の見直し。そして、発達障害という可能性。

 そして、もし統合失調症だとしても、いくつかの研究では「投薬なし」のほうが「長期的」には良好な転帰を示しているという結果が出ています。


 Mさんも書かれているように、広汎性発達障害と統合失調症――症状的にはくっきりした違いはないかもしれません。しかし、いったん統合失調症と診断された後のことは違いがあります。統合失調症の場合、医師も投薬への敷居が低くなる。

 が、ある医師から指摘されたのですが、発達障害の二次障害に対して、統合失調症に勝るとも劣らない投薬がなされているということです(だから、発達障害の二次障害という視点には意味がない、どころか有害無益であると――これは本当でしょうか)。

また、発達障害の二次障害として統合失調症を発症、あるいは発達障害と統合失調症の併発という診断もかなりあります。しかし、これらは、抗精神病薬をたくさん使いたいための言い訳のような診断に見えます。

 つまり、精神医療に「幻聴等」で関わると、こういうわけのわからない世界に引きずり込まれるということです。そこから抜け出すのがどれほど大変なことか……。

 親御さんとしては子どもの「幻聴」は「放置」できない問題です。しかし、「廃人化する統合失調症」というものがそれほどたくさんあるわけではないというのは事実です。そもそも「廃人化」するのは、薬の影響の方が大きいように思います。

 かつてMさんがそうしたように、子どもが幻聴等を発して、必死にネットで情報を探す親御さんに、この情報が届くことを祈っています。

 
























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