以前体験談を掲載したユキさんについて、その後のことをお伝えします。
http://ameblo.jp/momo-kako/entry-12047303668.html
発達障害と診断をされると、同様の状況に置かれる方もたくさんいると思いますが、こうしたやり方に、私は正直、一種の「暴力」さえ感じてしまいます。あまりに強い「医療信仰」、薬を飲めばなんでも治ると頑なに信じ込んでいる頑迷さ……。
現在ユキさんは薬はまったく飲んでいませんが、以前は精神科の▽▽病院に通っていました。主治医の女医は「あなたの状態を見る限り、一生薬を飲み続けなければいけない。特にSSRIは欠かせない」という意見。
何も症状を訴えていないのに「自閉症スペクトラム」という診断だけで服薬をしなければならないという方針です。
精神薬の薬害にあい、苦労して断薬をしたユキさんにしてみれば、再服薬など考えられません。そこで知人に相談をし、アレルギー専門の医師(◇◇アレルギークリニック)に診てもらえることになり、そこに通院し始めると、それまで苦しめられていたフラッシュバックや離脱症状等がかなり改善されたと言います。
しかし、そこは精神科ではないため、相談支援事業所職員からは、しつこく「なぜ▽▽病院に通院しないのか」と電話がかかってきました。
そこでユキさんは、きっぱりと相談支援事業所の職員に対して、「私はもう▽▽病院には行きません」と言い、また、
「▽▽病院の関係者と今後私の件で連絡を取るのは一切やめてください。役所や保健所、その他関係機関とで▽▽病院に行かないことなどで情報を共有するのはやめてください」と伝えました。
前回のエントリではここまでお伝えしましたが、その後、またしても相談支援事業所から発達支援センターへとつながり、思いがけない展開になったとユキさんから「憤りの電話」をもらいました。
その後メールも届きましたので公開させていただきます。
その前に一つ、相談支援事業所というのは、自治体から委託された事業所が行う福祉サービス事業のことです。
利用者は無料で受けられるサービスですが、相談件数や利用者が増えるほど自治体からお金が入る仕組みになっています。
一方、都道府県や市町村単位の「発達支援センター」は公立ですから、相談件数や利用者が増えることでお金が絡むことはありませんし、スタッフは全員自治体職員(=つまり公務員)です。
相談支援事業所から発達支援センターへ
9月中旬のことです。ユキさんは久しぶりに相談支援事業所に行きました。そうしたところ、事業所の人からいきなり、
「あなたは病識がない。発達支援センターを受診し、もう1度アセスメントしてもらった方がいい」と言われ、相談予約を取ることになったと言います。
いつもは数ヵ月待ちなのに、その日はたまたま翌日に予約が取れました。
以下ユキさんからのメールを紹介します。
「相談支援事業所の職員が、なぜ「受診」という言葉を使ったかというと、私の住んでいる県の発達支援センターは精神科医並の専門知識を有する(と思っている)ため、精神科医並に権力がある人と、医療者側も教育者側も、福祉関係者も行政も家族会も、みな思っています。
しかし、発達支援センターには臨床心理士はいますが、精神科医は1人もいません。ただ、発達支援センターの職員は、精神科の先生と同等、もしくはそれ以上に権力を持っており、〇〇県では絶大な支持を得ています。
久しぶりに発達支援センターを「受診」
予約した通り、翌日発達支援センターを受診しました。ここに来たのは久しぶりのことです。担当者に現在の報告とアレルギークリニックの◇◇先生にかかっている旨を話しました。
するとまず言われるのが、
「うちに来ている人は▽▽病院(精神科)に通院している人が多いけど、みんなそこに行くと体調よくなっているよ。うちに来ている人で薬の副作用で体調を崩してる人は見たことない。▽▽病院の人たちは発達障害支援においては全国レベルで支援体制が整ってるからね。とにかくドクターも臨床心理士もエビデンスレベルが高く、質の高い医療を提供していて、本当に見習うことばかり」そういった言葉から話が始まります。
次に、「相談支援の技法は大きく分けて2種類ある」との説明を受けました。
「1つは実社会で生活を積みながら、相談支援事業所に通う方法。
もう1つは精神科を定期通院し治療を受けながら、SSTなどの精神療法を受ける方法」
そして、私の場合、相談支援事業所に行っても何も変化がなかったから、前者のアプローチは無理だろう。だから、精神科(▽▽病院)に通院し、服薬治療を受けながら、主治医の指示に従って治療を受けるのが先。
▽▽病院の××医師(女医)の見立てはすべて専門的な見解ではあっており、あなたは今は社会に出れるような状態ではない。福祉就労もまだ難しいため、まずは服薬治療しながらデイケアで訓練を受けるべき。発達障害は精神安定剤で日常生活に支障がないレベルまで症状を抑えることが可能です」
と発達支援センターの方に言われました。
私としては以前の経験から、精神安定剤より漢方薬の方があっていることも伝えましたが、支援センターの職員は、
「◇◇先生は精神科ではないから行かない方がいい。◇◇先生の所に行っても治らない。◇◇先生の所に行くくらいなら、ちゃんとした病院(精神科のことです)に行って、合う精神安定剤を見つけるべき。見つからない場合は、入院してどの薬が1番合っているか探すこともできる」と言われました。
しかし、◇◇先生のところに行ったら、十数年出ていたフラッシュバックもよくなり、今はフラッシュバックで生活に支障が出ることもなくなりました。精神安定剤だと何一つよくならず三次障害まで出ていたのです。
さらに職員は、「再検査もあえて受ける必要はない。療育センターの心理検索の結果が間違っているとは思えないし、本当にレベルの高い精神科医であれば問診で行動観察を行う技術もあるのですぐあなたの様子はわかる」と医療信仰のすごさです。
また、現在私がやっている活動(あるボランティア活動)もすべてやらない方がいい、とも言われました。私が関わっている団体について話をしたら、職員は
「そこの団体にあなたの本当の今の症状を伝えて、苦情を入れてやるから、担当者の名前・役職、住所、電話番号を教えなさい」
と命令されました。
あまりにも人を小馬鹿にした言い方だったので教えませんでした。
精神科の病院を受診しなさい
さらに、発達支援センターの職員からは、
「自分の見ている前で、今すぐ▽▽病院に受診予約を入れなさい」
と命令されました。
もう逃げられないと思い、私は▽▽病院に電話を入れ、受診予約を入れる“フリ”をしました。
ただし話している内容はすべてメモを取られました。
「カウンセリングとデイケアを受けたいから受診予約を入れたい」と私が言うと、あとで職員から、
「カウンセリングとデイケアを受ける必要があるかどうか判断するのは精神科医だ!
あなたのやっていることはドクターに対する反逆行為だ!」と怒鳴られました。
▽▽病院の予約受付係は上記については何一つ触れませんでしたが。
また、その人は「▽▽病院には、結局、あなたの思い通りの治療を受けられないから行くのをやめたんでしょ? はっきり言ってそれは身勝手というものだよ。
ちゃんと主治医の指示通り服薬すれば、発達障害の『症状』も治るし、カウンセリングやデイケアを受ければ更に早く治ります。
また多剤大量処方であればあるほど症状は早く治ります。薬をたくさん飲めば飲むほどそれだけ早く症状は治ります。
薬は発達障害の人に飲ませても科学的に安全と証明されている有効な治療法です。それで状態が悪化することはあり得ません」と言われ、
最後に、相談支援事業所の人に今日話したことの報告と、▽▽病院の受診日が決まったら発達支援センターにも連絡するように約束したところで終了しました。
実は発達支援センターの対応で困っているのは今に始まったことではありません。
私の担当である専門相談員は、心理系の資格所持者で、成人当事者の職場適応支援や就労支援を担当している職員です。
私の知り合いの成人当事者も何人かこの方の相談に通っている人がいますが、とにかく精神医療につなげたがる人です。
上記の精神的虐待(?)に近い行為は、今の担当に変わってから、ずっと、それも年単位で続いています。
今回のような酷い対応は今までありませんでしたが、この担当は私のことを「妄想・虚言癖の症状がある」と見ています。
発達支援センターでは今の担当になる前は違う人に相談していますが、その当時は「幻聴・幻覚・被害妄想の症状が認められる」と言われていました。当時は抗精神病薬、抗不安薬、眠剤などを処方されていた時期でした。
実際、今の担当者からは、
「発達障害に加え、統合失調症の症状がある」と疑われています。もちろんこの担当は心理系の資格だけで精神科医ではないので診断はできません。
しかし、私が「自分は過去に精神科の先生から統合失調症ではない」と言われたと伝えると、いぶかしそうに首を傾げていました。
年金申請のために精神科とは縁が切れない
相談支援事業所の指示で発達支援センターに行きました。久々に行ったのですが、あんなところ二度と行きません。
▽▽病院の女医にも二度と診てほしくありません。
しかし、現在障害基礎年金をもらいながらの生活なので、今すぐ精神科と縁を切るのは難しいです。
そこで、紹介状がなくても受診できるクリニックを探して、受診することにしました。(診察理由は発達障害の再検査です)。
そこで、薬のことは今のところ何も言われてませんが、◇◇先生(アレルギーの)いわく、
「安定剤処方されても絶対飲まないでね。もし安定剤処方された場合は受診の時にすぐ相談してね」と言われています。
ともかく、今はこのクリニックを頼りに、障害基礎年金の申請をしようと考えています。
また、発達障害の人は発達支援センターを利用するよう義務付けられているわけではないので、支援センターとは縁が切れても申請に不利に働くことはありません」
以上がユキさんのその後の経過です。
ここにはいくつかの問題がはっきり見えています。
まず、発達障害と診断された人を取り囲む支援側の職員の「精神医療の盲信」です。薬さえ飲んでいればいいという有無を言わせぬ前提で物事を運んでいく姿勢。
また、発達障害としてさまざまなサービスを受ける場合、精神医療がセットになっている点。
つまり、発達障害と診断をされて、サービスを受けるためにはかなりの確率で服薬しなければならないのが現実であるということです。
発達障害と精神医療がなぜこうも密接な関係でつながってしまったのか?
さらに、これはユキさんも感じていることですが、相談支援センター、発達支援センター、精神科の病院が当事者の情報を共有しているらしいことです。もちろん、統一された「支援」を行うためには必要なこととという前提(言い訳)はあるのでしょうが、これでは一度「相談」をした利用者はすべて丸裸にされてしまいます。したがって、ユキさんのように精神科の薬を飲んでいない利用者はアウトリーチの対象になりやすいのでしょう。
こうした「支援事業」がどこまで利用者にとって有益なのか。
支援とは精神医療につなげることという短絡的な考えに陥っている職員が多い可能性も否めない現状では非常に疑問に感じます。
発達障害者への本当の意味での支援とは?
困難な課題ですが、少なくとも精神医療を前面に出しての支援は、決して本当の意味での支援にはならないことを相談担当者には知ってほしいと思います。
発達障害と精神医療の関係にはこの相談事業が大きな役割を果たしています。